2015 Fiscal Year Annual Research Report
出産・育児が女性の就業に与える影響:性別選好・介護・家族関係の観点から
Project/Area Number |
15H03363
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
McKenzie Colin 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (10220980)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
暮石 渉 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障応用分析研究部, 第4室長 (00509341)
坂田 圭 立命館大学, 経済学部, 教授 (60346137)
若林 緑 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (60364022)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 労働経済学 / 出産 / 育児 / 女性の就業 / 介護 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、厚生労働省の「人口動態調査」と「21世紀出生児縦断調査」を利用しているが、このデータには2001年1月と7月に生まれた子供が対象となっている。データセットを初めて使っており、標本数も多い(第1回の調査では4万人以上)ため、データ整理とデータクリーニングにかなりの時間を要した。 その作業が終了してから、産休育児休業から仕事に早期復帰する母とそうではない母との間に就業状態は短期的または長期的に差が生まれるかどうかを詳細に検討した。2001年時点では、条件を満たせば母は1年間の産休育児休業期間を取得する権利が発生するが、1年未満の取得でも良い。ここでの早期復帰とは、産休育児休業期間をフルに取らずに、12か月未満のケースから全く取らないケースを意味する。そのために、母の就業状態と早期復帰ダミーを二次方程式プロビットモデルで推定したが、その際、早期復帰ダミーの操作変数として子供が7月に生まれたかどうかを使った。 日本において認可保育所に入るのは4月になるが、そのために、前の年の12月までに入所願書を提出する必要はある。データ上、1月生まれの子供のケースに比べて、7月生まれの子供をもつ母は仕事に早期復帰する確率が明らかに高い。これによって子供の生まれる月によって決定的な差が生まれるので、この差を通じて効果を識別する。 結果として、早期復帰は長期的に母の働く確率に影響を与えないが、長期的に母のフルタイムで働く確率に影響を与えることが判明した。短期的に母の働く確率又は母のフルタイムで働く確率に影響を与えない。この研究成果を論文としてまとめ、慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センターのディスカッションペーパーとして公開し、現在、投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、この1年間で一からデータを使い始めてから論文一本ができあったという状況から判断すると、研究は順調に進んでいると考えている。 研究計画では、既存の研究と同様に、子供の性別によって日本の女性の就業行動が変わると考えたが、いろいろなモデルを推定した結果として性別効果がなさそうなので、そのような研究をやめ、他の課題に研究を集中することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年9月まで暮石と若林はドイツに滞在していたため、打ち合わせをするのことは難しく、かつ、その期間中「21世紀出生児縦断調査」を使うことがデータ利用条件上禁止されていた。現在はその制限が無くなっている。 頻繁にメールで研究、問題点、結果等について議論しており、定期的に東京・仙台又は大阪で打ち合わせを予定している。それによって研究がかなり推進される。
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