2016 Fiscal Year Annual Research Report
Long-Term Trends and Fluctuations of Foreign Trade, Domestic Commerce, and Commodity Prices in Colonial India: A Statistical Study
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15H03369
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
杉原 薫 総合地球環境学研究所, 研究部, 特任教授 (60117950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神田 さやこ 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (00296732)
西村 雄志 関西大学, 経済学部, 教授 (10412420)
木越 義則 名古屋大学, 経済学研究科, 准教授 (00708919)
小川 道大 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター, 研究員 (30712567)
小林 篤史 大阪産業大学, 経済学部, 講師 (40750435)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | インド / 「長期の19世紀」 / 外国貿易 / 国内交易 / 物価 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も、多くの研究会や打ち合わせの機会を設け、情報を交換しつつ統計の収集と加工の作業を続けた。本研究だけの研究会としては、8月2日にGRIPSで行ったものが唯一のものであるが、杉原が経済史班代表を務めるGRIPS新学術領域のプロジェクトと共同で英文論文集を刊行する企画が進み、本研究との共同研究会を8月3日にGRIPSで、さらに共同の国際ワークショップを2017年3月13日に京都大学で開催した。また、これ以外にも、例えば11月に京都大学東南アジア研究所のプロジェクトの研究会で本メンバーの半数が報告して本研究の成果を紹介したり、2017年1月に一橋大学経済研究所のプロジェクトで杉原がインド貿易統計の概観を報告し、アジア歴史統計の関係者全体に本研究の概要を説明したりというように、メンバー間でもメンバー以外の関連研究者のあいだでも、密接な交流を繰り返した。国際的にも、5月と2017年3月に杉原がイギリスで報告し、Tirthankar Roy, Prasannan Parthasarathiなどと情報を共有した。その結果、本研究の描くインド交易統計の資料像の重要性が幅広く共有されるようになった。 もう一つの作業は、British Libraryなどから多くの追加資料を入手しつつ、GRIPSの杉原研究室で、谷中紘子さん(リサーチアシスタントとして雇用)をハブとして、データベースを構築することであった。小林、小川などがロンドンで収集した資料も含め、データが杉原研究室に集積された。 これらの作業から浮かび上がってきたもっとも重要なfindingsは、19世紀中葉から1880年代にかけて、イギリスの植民地支配が鉄道建設などをつうじてもっとも進展した時期に、伝統的な国内交易も、衰退したり、新しい交通手段によって単にとってかわられたりしたのではなく、全体としては大きく拡大した、というメッセージである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の実績報告書で、小林の1年間のロンドン滞在の成果として、19世紀前半と後半の統計の接合の見通しがある程度ついたことを報告したが、小林はベンガルについて具体的な連続統計の作成をほぼ終了した。これを受けて、杉原は、引き続き19世紀中葉における外国貿易と国内交易の関係を探った。今年度の主たる努力は1850年代の国内交易統計を、その後の、1880年代にいたる統計と接続することであった。交易統計として包括的には記録されていないが、各地のAdministration Reportsなどにroad-borne trade, boat-borne trade, steamer-borne trade, canal-borne tradeあるいはinternal trade, provincial tradeなどの表現で収録されている交易額を外国貿易、沿岸交易、鉄道交易統計と照らし合わせていくことによって、国内交易の具体的な拡大過程が少しずつ明らかになりつつある。杉原の11月の京大での報告で初めて紹介したカルカッタとその周辺の交易統計では、これらすべての統計が都市を中心にまとめられており、その整合性をある程度まで検証できるようになった。また、小川も、ボンベイ州について、同様の統計の突合せを行いつつある。 個別研究でも大きな成果があった。神田の単著は、年来の研究成果であるが、塩の沿岸交易、国内交易の研究として国際的にも貴重なものである。谷口は、19世紀初頭の貿易の動向をベンガルを中心に明らかにした論考を発表した。さらに、木越や新学術領域グループの城山などとの交流から、インド国内交易の像の変化がアジア域内交易論全体に与える影響についても、議論が始まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2017年度も、引き続き研究会での交流、発信と、データべ―スの充実のための作業を続ける。すでに8月2日に、新学術領域プロジェクトと共同で研究会を開催することが決まっている。京都大学、一橋大学の研究会との関係も継続する。イギリスでの調査も2-3名が続ける予定である。 それと同時に、データそのものの公開に向けた作業を開始する。具体的には、杉原を中心に、いくつかのディスカッション・ペーパー的なものを書いて、そのなかである程度まとまったデータを示す。データそのもののオープンアクセスについてはなおさまざまなハードルがあるので、この研究の範囲で、加工したデータの公開をまず進めたい。 また、これとは別に、研究成果の解釈、位置づけをめぐる論考も発表したい。いまのところ、杉原は、インド貿易の概括的なものと、国内交易に特化したものの発表を考えているが、さらにメンバーのなかにも、独自の観点からの解釈が示されることが期待される。いずれも、新学術領域との共同研究と密接に関連している。 なお、本研究の開始時に想定していた課題のうち、いくつかの分野の視点が遅れている。物価統計の整理、貨幣綿の分析がそれである。メンバーの個別研究は進んでいるので、総合に努めたい。 さらに、本研究に協力研究者として参加していただいてきた谷口、諸田などの若手研究者(ポスドク・レベル)およびGRIPSの院生の研究の進展も大いに期待できる。 なお、杉原が2016年度10月にGRIPSから京都の総合地球環境学研究所へ移動したことに伴い、本研究もベースを地球研に移した。しかし、最終年度である2017年度が終了するまで、GRIPSの杉原研究室を維持し、谷中さんに引き続きデータのハブになって作業を続けてもらう予定である。
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Research Products
(50 results)