2017 Fiscal Year Annual Research Report
コーポレートガバナンスと企業行動、企業パフォーマンスの国際比較研究
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15H03375
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
井上 光太郎 東京工業大学, 工学院, 教授 (90381904)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 卓爾 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (60454469)
蟻川 靖浩 早稲田大学, 商学学術院, 助教授 (90308156)
池田 直史 東京工業大学, 工学院, 助教 (90725243)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経営財務 / コーポレートガバナンス / 企業行動 / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究計画3年目であり、計画に基づき関連する複数の研究プロジェクトを並行的に進めた。第1に、井上、蟻川、齋藤による国際比較による日本企業の収益性、株価水準の要因分析の成果について英語論文を作成した。日本企業における雇用硬直性と取締役会の閉鎖性(社外取締役比率の低さ)が低収益性と低株価の要因との結果を2017年12月のWorld Banking and Finance Symposiumで報告し、そこでの討論者からの指摘を反映し最終投稿論文の準備を進めた。 第2に、上記の国際比較分析での結果に関連して、井上・池田が、日本企業の財務パフォーマンスを株主構造の違いによる経営規律付け程度の違いで説明できるかの検証を行い、その成果論文がNBER Working Paperに採択された。さらに最終論文がJournal of The Japanese and International Economiesに掲載された。この論文は米国Columbia大学のJapan Economic Seminarで報告したほか、Harvard Law School Forum、Harvard Business Reviewにもサマリー報告が掲載された。また、齊藤が同じく株主構造が経営者交代に与える影響を検証し、その成果をJouranl of The Japanese and International Economiesに掲載した。 第3に、井上と池田による日本を含む17カ国の経営者の基本的態度と各国企業の投資行動の関係を検証した論文は、現在、国際査読誌に投稿中である。 第4に、企業の代表的な投資行動としてM&Aに注目した国際比較研究については、雇用制度の硬直性がM&A行動を阻害するとの仮説と整合的な結果を確認した。この研究成果は2018年6月の日本ファイナンス学会報告が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1の企業の収益性、株価水準、成長性と、コーポレートガバナンスおよび雇用制度の関連性の国際比較研究については、査読付き国際学会での報告を経て最終論文作成段階に到達した。本年度前半には投稿を行う予定であり、当初計画よりは少し遅れたが計画年度中の専門誌掲載を目指す。 第2の日本企業の株主構造による経営規律付け効果の違いによる企業行動への影響について検証した論文については、顕著な進展があった。米国NBER Working Paperに採択され、さらに最終論文が国際査読誌に掲載された。また、この論文の成果が米国で注目され、Harvard Law School Forum、Harvard Business Reviewなど有力サイトで紹介されるなどインパクトを与えた。また、齊藤も同様に株主構造が経営者交代に与える影響を検証し、その成果を国際査読誌に掲載した。 第3の経営者個人の基本態度と企業行動の関係の国際比較分析についても投稿論文を完成させ、国際査読誌への投稿を行っている。 第4のM&Aの国際比較論文については、第一段階の分析を終えて2018年度の日本ファイナンス学会での報告が決定している。 このほか、経営幹部の報酬の違いが企業行動に与える影響に関する論文を日本経営財務研究学会大会で報告、コーポレートガバナンスコードの効果に関する国際比較研究の論文を日本経営財務研究学会・東日本部会で報告した。いずれもそこでのコメントを反映し、英語論文作成を進めた。 以上のように、関連する複数の研究プロジェクトを同時に進めているが、第2の研究は最終成果に結びつき、残りの研究プロジェクトも成果論文が査読誌投稿段階に達しており、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
4年計画の最終年の本年度は、これまで進めてきた研究成果の論文を完成させ、学術誌に掲載することに注力する。この対象としては、(1)コーポレートガバナンスコードの導入の効果の国際比較分析(国際学会報告済)、(2)企業統治と雇用制度と 企業パフォーマンスの国際比較分析(国際学会報告済)、(3)経営者の態度と企業投資行動の国際比較分析(国際学会報告済、国際査読誌投稿中)などである。また、現在も分析を行っている(4)企業統治と企業の投資行動の国際比較分析、(5)企業統治および雇用制度とM&Aのパフォーマンス分析については、引き続き分析の精度を改善し、国内外の学会で報告することを計画している。 上記のうち、(1)から(3)の研究プロジェクトについては、国際学会で指摘された改善点を考慮し、その反映と論文の改善を中心に研究を進める計画である。 (4)の研究プロジェクトは、(1)から(3)の研究プロジェクトを進める中で重要な課題として研究チームが認識した点を反映した発展的な研究である。(4)の研究は、世界の主要国企業の財務、株価、株主構造および企業統治のパネルデータに基づく分析だが、国際比較を可能とするためのサンプル選択とデータ取得において様々な問題に直面しており、その解決を年度前半には目途をつけることを目指している。その上で年後半には分析の高度化を図り、国際学会での成果の報告を目指すことを計画している。 本研究における実証分析に基づく証拠は、特にコーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードなどの制度設計の検討に直接的な示唆を持つと期待できる点で、政策や実務に対しても重要であり、制度設計者や実務家との意見交換も積極的に行っていく。
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Research Products
(12 results)