2016 Fiscal Year Annual Research Report
東日本大震災後の喪失悲嘆に対する中長期の心理社会的支援プログラムの開発と検証
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15H03443
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Research Institution | Ryukoku University Faculty of Junior College |
Principal Investigator |
黒川 雅代子 龍谷大学短期大学部, その他部局等, 教授 (30321045)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂口 幸弘 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (00368416)
白井 明美 国際医療福祉大学, 医療福祉学研究科, 准教授 (00425696)
高橋 聡美 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, その他, 教授 (00438095)
中島 聡美 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (20285753)
瀬藤 乃理子 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 准教授 (70273795)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | あいまいな喪失 / 震災遺児支援 / 複雑性悲嘆 / 集団認知行動療法 / G-CGT / 認知行動療法 / 支援者支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
あいまいな喪失支援プログラムは、事例検討会をその第一人者であるミネソタ大学名誉教授のボス博士にコンサルテーションを受けながら継続して実施した(1回/年、約70名)。参加者は90%以上が良かったと回答し評価を得た。またその普及のために「あいまいな喪失」についての書籍の出版準備を行っている。 遺児支援プログラムは、NPO法人子どもグリーフサポートステーションおよびあしなが育英会とで年間24回子どものグリーフプログラムおよび保護者のプログラムを開催した。宿泊、日帰りでグリーフキャンプを各1回ずつ開催。これらのプログラムに延べ105名の震災遺児が参加した。参加者のリピート率は9割で評価を得ている。 複雑性悲嘆の集団認知行動療法(G-CGT)は、有効性、安全性を複雑性悲嘆を抱える遺族を対象に対照群を置かない前後比較試験によって検証する目的で研究を行った。岩手県精神保健福祉センターで複雑性悲嘆のG-CGTを行い、プログラムの前後、および実施後3か月、6か月後に複雑性悲嘆症状、うつ症状等を評価した。また、Wagnerによるインターネットを媒介としたメール往復による筆記課題を行う認知行動療法プログラム(全10回)の日本語版を開発し、専用ウェブサイトにより募集を行った。親族等との死別から13 カ月以上経過している中~軽程度の複雑性悲嘆を主訴とする20歳以上の遺族を対象に、電子メールによって実施した。 支援者支援プログラムは、2つのウェブサイトのページ数を増やし再編した。今後の災害に備え、スマートフォンからアクセスしやすいウェブサイトを新たに1つ開設した。また、これまでの多くの震災研究において女性支援者のほうが男性支援者に比べ、ストレス尺度の結果が高値であることから、災害時の女性支援者がかかえる問題に関して、文献レビューを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
あいまいな喪失支援プログラムは、毎年事例検討会を積み重ね、支援方法についての構築を行っている。 遺児支援プログラムは、プログラムに参加した保護者を対象にインタビューを行った。現在の困りごととして震災直後は住む場所や経済的な課題が多く挙げられたが、震災から月日が経過するにつれ子育てのこと、子どもの進学の問題、親戚との付き合い、再婚などライフサイクルに合わせて新たな課題が見られた。遺児たちのプログラムへのリピート率は9割と高く、6年通っている震災遺児は3割であった。プログラムに来なくなった理由としては、プログラム対象年齢を超えたことが最も多く、理由不明が次に多かった。プログラムに参加している子どもたちの自尊感情の変化については今後調査予定である。 複雑性悲嘆の集団認知行動療法(G-CGT)は、岩手県精神保健福祉センターの主催する悲嘆関連講座および自死遺族自助グループに参加した複雑性悲嘆を抱える遺族で研究参加希望のあった遺族を対象とした。20例(平成28年度までに17例)が複雑性悲嘆の集団認知行動療法(G-CGT)治療を完遂した(脱落率20%)。結果、介入後およびフォローアップで複雑性悲嘆症状、抑うつ症状は有意に改善した。重篤な有害事象見られていない。筆記療法については、国内外からの照会があり、参加希望者42名のうち参加条件に合致した35名中、全回の課題完遂者は26名(男性3名、女性23名、平均年齢45歳)、3か月後のフォローアップまで終了したものは23名であった。中断者は9名、中断率は25%であった。プログラム中の有害事象の訴えは見られなかった。 ウェブサイトは完成し、その後も更新作業を継続している。災害時の女性支援者のストレスに関しての文献レビューは、書籍の章として出版した。
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Strategy for Future Research Activity |
あいまいな喪失支援プログラムは、引き続き事例検討会を重ね、プログラム構築を目指すとともに、書籍の出版について準備をすすめていく。 遺児支援プログラムは、プログラムに参加している子どもたちの自尊感情の変化について、今後調査予定である。 複雑性悲嘆の集団認知行動療法(G-CGT)は、岩手県精神保健福祉センターにて、研究を継続する。目標症例数30例の治療の完遂を目指す。 支援者支援プログラムについては、女性支援者インタビューを実施し、論文化を目指す。
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Research Products
(13 results)