2016 Fiscal Year Annual Research Report
高齢期の生活実態と求められる在宅ケアの質に関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
15H03444
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
白瀬 由美香 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (50454492)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泉田 信行 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障応用分析研究部, 部長 (70360716)
猪飼 周平 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (90343334)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 高齢者 / 生活モデル / 在宅ケア / ケアの質 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度も前年度と同様に、1.高齢期の生活実態を捉える調査研究、2.ケアの質に関する調査研究の2つの観点から研究を実施した。 1.高齢期の生活実態を捉える調査研究:前年度に実施した「高齢者の生活と健康に関する調査」の分析作業を行なった。その結果、同サロンを運営するボランティア活動従事者、市内在住の一般高齢者に関して、生活様式や社会参加の状況、健康状態、活動能力などの面で違いのあることがわかった。とりわけ日常生活で重視する事柄については、いずれも健康を最重視している点は共通したものの、それ以外では異なる傾向を見せていた。また、同居者のいる高齢者の家庭内での役割分担に関しては、調理・片付けや掃除は女性が従事する傾向の高いことが示された。 2.ケアの質に関する調査研究:英国の認知症ケア分野で取り入れられている「パーソンセンタードケア」概念およびケア実践に関する文献調査を行なった。概念の提唱者キッドウッドによれば、認知症者が一人の人間として尊重されることが中心にあり、共にあること、くつろぎ、自分らしさ、結びつき、たずさわりなどが重要な心理的支援となるという。その実践手法である認知症ケアマッピングは、ケアの質を一時的に評価するだけでなく、職員に振り返りの機会を提供して改善を繰り返していくためのツールとして用いられていた。そのほか、生活モデルに基づく支援の観点からは、保健師が高齢者ケアに果たしてきた役割の変遷に関する史資料収集を行い、文献の整理と検討を行なった。また、「共生型ケア」と呼ばれる高齢者・障害(児)者・子どもなど多様な利用者を同一施設で処遇する取り組みについて調査を行なった。対象者別の施設とは異なる多世代交流の利点がある一方で、個別ニーズへの対応可能性については、さらなる検証が必要と考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ収集や分析は予定通りに進んでおり、中間的な成果をいくつかの学会等で報告することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
質問紙調査の回答者には、引き続き追跡調査を行ない、生活様式や健康状態の変化を検証する。次年度は最終年度を迎えることから、調査から得られたデータの分析を進め、現代における高齢者像を提示するとともに、在宅ケアの質がいかに成り立っているのかを明らかにする。在宅ケアのプロセスで高齢者は何を重視しているのか、専門職はどのような支援を成すべきかを問い直し、そこに求められる質の特性の基礎づけを目指す。
|
Research Products
(5 results)