2015 Fiscal Year Annual Research Report
病気やケガに関する子どもの理解・表現と大人の対応に関する研究
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15H03451
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中島 伸子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (40293188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
外山 紀子 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (80328038)
向井 隆久 九州大学, 人間環境学研究院, 助教 (30622237)
亀崎 路子 杏林大学, 保健学部, 教授 (50413026)
木内 妙子 東京工科大学, 医療保健学部, 教授 (50279775)
前田 樹海 東京有明医療大学, 看護学部, 教授 (80291574)
住吉 智子 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50293238)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 子どもの病気理解 / 病気に関する表現行動の発達 / 子どもの病気理解についての大人の推定 / 小児医療環境 / 発達心理学 / 小児看護 / 学校保健 |
Outline of Annual Research Achievements |
次の4点から調査、実験などにより実証研究を進め、基礎的知見を蓄積した。
1.病気やケガに関する子どもの理解:(1)痛みの原因について、幼児でも内在的正義(病気や痛みの原因を不道徳な行為に求める思考)を支持しないこと、痛みの所在により原因や緩和法を区別することが示された。(2)伝染性・非伝染性の病気、ケガについて、幼児でも内在的正義を支持しないこと,児童期半ば過ぎから,非伝染性の病気には体質が関与するとの理解がみられること,大人はアレルギー性か否かによって,病気の原因を区別することが示された。(3)病気やケガの日常体験事例を分析し、子どもの理解の内実やその発達、大人との相互作用のあり方についての情報が得られた。 2.病気やケガに関する子どもの表現行動と大人の対応:(1)小中学校の養護教諭へのインタビュー調査から、子どもの傷病の表現、養護教諭の見立てや対応について意味内容を抽出し、質的記述的方法による分析を開始した(2)子どもの予防接種時の母親の配慮として、目的・事実を伝え、主体的参加を促す、心理的準備をするなどが示された。 3.子どもの理解に関する大人の推定:(1)先天性心疾患児の母親ら6名へのインタビュー調査から、患児の受け止め方として「ものごころつく時には理解している“心臓に病気がある自分”」などの10の概念が得られ、中核カテゴリーには『疾患があることの葛藤と諦め』が抽出された。(2)小児看護教育者6名へのヒアリング調査から、看護学生は実習場面において小児の行動理由の推論や対処方法の選定が困難であることが示された。 4.小児の医療環境およびプレパレーションの実施状況:全国の小児科を標榜する300床以上の病院256病院(回収率23.9%)に対する調査から物理・人的環境面の実態を明らかにし、小児医療従事者9名のインタビュー調査を加えることでプレパレーション実施状況の詳細を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
病気やケガに関する子どもの理解の検討、小児の医療環境およびプレパレーションの実施状況についての検討についてはおおむね順調に進んでいるが、病気やケガに関する子どもの表現行動と大人の対応の検討,子どもの理解に関する大人の推定,については一部の調査においてやや遅れがみられることから、(3)の評価とした。いずれも、観察対象となる事象・事例、あるいは対象者の収集に想定以上の時間がかかることが遅れの原因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、次の4点についての実証研究を進め、基礎的知見を蓄積する。
1. 病気・ケガ・痛みに関する子どもの理解の検討:(1)幼児を対象として、痛みのコントロールの理解の発達(中島)、(2)幼児,児童、大人を対象として,病気のかかりやすさ・病気の原因に関する理解(外山)について実験により検討し、(3)病気やケガ・医療的ケアについての2~5歳児の理解を保育者インタビューと日誌法により検討(向井)。 2.病気やケガに関する子どもの表現行動と大人の対応の検討:(1)小中の児童生徒における養護教諭との関わりを通した傷病理解過程(亀崎)、(2)3~5歳児における疾病に関する表現行動と養護教諭の対応(中島)、(3)3歳未満児における痛みの表現(外山)、(4)子どもの予防接種時の母親の説明と対応、子どもの反応や医療従事者の対応との関連等(木内)、について観察により検討。 3.子どもの理解に関する大人の推定についての検討:(1)前年度に実施した先天性心疾患児の母親ら6名に対するインタビューデータの分析を進め、生後からの疾患児と健康児との「病気の理解のしかた」の相違の明確化を行う(住吉)。(2)疾病時や,医療的ケアを受ける子どもに対する大人のかかわり方、子どもについての理解・認識を保育者インタビューと日誌法により検討(向井)。(3)小児看護学に関する看護学生の素朴概念について理論に基づいた適切な実践方法で置き換わっている程度を測定するための質問紙を開発する(前田) 4.医療を受ける子どもに配慮した対応や環境整備についての検討(全員):全国の小児医療中核病院から10箇所程度をピックアップし、小児看護師を対象に次の4点について聞き取り調査を行い、小児看護と発達心理学の視点から分析する。(1)子ども観、(2)子どもの医療観、(3)発達心理学の浸透、(4)発達心理学への期待。
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Research Products
(6 results)