2016 Fiscal Year Annual Research Report
視空間と触空間における直線の平行性と収斂性:ユークリッド空間説の検討
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15H03465
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
東山 篤規 立命館大学, 文学部, 教授 (00118001)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 感覚順応 / 水平面 / 体性感覚 / 視覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
視覚情報が与えられていない状況において傾斜した床面に仰向けにしばらく横たわっていると,体が地面に対して水平(地面に対して平行)に位置しているように感じられるようになる.これは視覚的順応(Gibson & Radner, 1937)に倣って,体性感覚的順応でと考えられる.この順応は,垂直面と並んで基準normと考えられる水平面の方向に,体幹が回転したように感じられた結果である. 傾斜面に対する体性感覚的正準化normalizationと視覚的正準化を比較するために,傾斜面に対する順応方法において異なる3実験を行った.体性条件では,23観察者が目隠しをして-6°, 0°, あるいは+6°の傾斜面に10分のあいだ横たわった.体性感覚+視覚条件では,20観察者は,開眼して,上記の傾斜した面のそれぞれの上に10分のあいだ仰向けに横たわった.視覚条件では,21観察者は椅子に正立して座り,上記の傾斜角を持つ床面の部屋を10分のあいだ観察した.順応したのちに,観察者は,順応のために用いられた傾斜角の近傍角に傾けられた床面の傾斜角を言語的に推定した.順応角が±6°のときに観察者が水平と感じる角度は,体性感覚条件では平均約±6°(完全順応)となり,視覚条件では±2.5°となり,体性感覚+視覚条件では±4°となった. 体性感覚は,視覚よりもいっそう正準化しやすいといえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
とくに,予想外のことが起こっているわけではなく,全体として順調に研究が進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
視空間と体性感覚的空間における直線の平行性を検討する.昨年度までに行われてきた研究では,自然な枠組み,すなわち重力に直行する床面の上に置かれた水平な机のような上において平行性が検討されてきた.今後は,被験者のおかれた環境自体が傾いている状況において,視覚的にあるいは体性感覚的に,大地に平行な直線がどのように形成されるのかを明らかにする.いっぱんに大きな枠組みの中に小さな線分が与えられてその線分が大地と平行になるようにセットさせると,枠組みによって示唆される方向に線分の方向が調整される.これと同じことが,目隠しをして傾いた床面に立たされた被験者が,触覚的に線分の方向を求められたときに,視覚と同じように床面の傾きによって影響されるのかどうかを検討する. 大学生40名を被験者に用いる.立命館大学に設置されている環境傾斜装置(直方体の部屋,ただし傾斜させることができる)を用いる.環境傾斜装置の側壁には直径100cmの円盤を取り付ける.円盤の中心には,幅5㎝長さ100cmの針を付け,被験者自身がこの針を回すことによって針の方向を調整することができる.今年度の最初に,円盤に針を付けたものを作成し,それを環境傾斜装置に設定する. 視覚条件:20被験者は開眼して,傾いた床(傾斜角=-6,0°あるいは6°)に立ち,垂直方向あるいは水平方向と思われる方向に針を調整する.触覚条件:別の20被験者は閉眼して,傾いた床(傾斜角=-6°,0°あるいは6°)に立ち,手探りで垂直方向あるいは水平方向と思われる方向に針を調整する.いずれの条件においても,垂直水平方向の調整が終わったのちに,針の傾斜角を10, 20, 30, 40, 50, 60, 70, 80°に提示して,被験者にはその角度を言語的に推定させる.また上記の10~80°の角度を指定して,被験者自身が針を動かすことによって指定角を産出させる.
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