2017 Fiscal Year Annual Research Report
視空間と触空間における直線の平行性と収斂性:ユークリッド空間説の検討
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15H03465
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
東山 篤規 立命館大学, 総合心理学部, 教授 (00118001)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 傾斜床面の傾斜 / 身体的順応 / 視覚的順応 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的.傾斜面に対する身体的順応に関する研究を行った.目を閉じ傾斜面に横たわっていると,床が水平に感じられるか,当初に感じられていたほどには傾いていないと思う(身体的順応).また,水平から傾いた線分を見ていると,線分が水平に見えるか,当初に感じられたほどには傾いていないと思う(視覚的順応).視覚的順応に比べ身体的順応の研究が乏しいので,本研究では,観察者がいる床面を傾け,その面に対する身体的順応を測定し,傾斜した部屋に対する視覚的順応との差異を明らかにした. 方法.身体順応実験:観察者は23大学生,床面は環境傾斜装置を用いて±10度までの任意の角度に傾けることができた.目隠しをした各観察者は,順応のため,傾斜角0度,-6度,+6度の床面に5分間仰向けに横たわった.その後,テスト傾斜として,順応傾斜のほかにその上下に4傾斜の計9傾斜が与えられた.観察者は,各テスト傾斜の大きさを判断した.視覚順応実験:20大学生.開眼した各観察者は,水平に静止した土台に置かれた椅子に座った.観察者の頭は固定.部屋は,まず順応条件として0度,-6度あるいは+6度に5分間傾けられた.その後,テスト傾斜として部屋の9傾斜角(順応刺激と順応刺激の上下の4傾斜)を判断した.身体+視覚順応実験:21大学生.各観察者は開眼し,回転する床面に横たわった. 観察者は,順応条件として部屋を0度,-6度あるいは+6度に傾け,5分間の順応を行った.その後,観察者は,身体順応実験と同じ9テスト刺激を判断した. 結果.1.一般に床の傾斜は過大に推定された.2.身体順応条件の主観的水平は傾斜角4.9度となり,視覚順応条件と身体+視覚条件では,傾斜角3.6度と3.4度の面が主観的水平となった.身体条件では,他の2条件よりも順応量が大きかった.身体+視覚条件と視覚条件の主観的水平は近似した.これは順応における視覚優位を示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ひじょうに順調にデータが集まっている.
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Strategy for Future Research Activity |
床面傾斜の知覚における触運動感覚と視覚の相互作用について研究する.これまでの研究結果によれば,目を閉じて触運動感覚の手がかりのみによって水平面の判断を行ったときには,弁別閾(DL)が大きいのに対して,開眼状態にして同様の判断を行ったときには,弁別閾は半分に低下する.これは,視覚的手がかりが,触運動的手がかりを抑制したと考えられる.その意味において「視覚優位」の現象と考えられる.本年度は,この結果を踏まえて,触運動感覚的床面と視覚的風景の傾斜が独立に操作できる状況を設定し,触運動感覚的床面の感じられた傾斜が,視覚風景の傾斜によって影響されるのか,視覚的風景の見かけの傾斜が,触運動感覚的床面の傾斜によって影響されるのかを検討する.前者が生じた場合は,視覚優位と考えられるが,後者が得られたときは触運動優位を考えられる.
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