2015 Fiscal Year Annual Research Report
教師の資質・力量・パフォーマンス等と学校経営・教育政策に関する政策科学的研究
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15H03489
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Research Institution | Kyoei University |
Principal Investigator |
藤田 英典 共栄大学, 教育学部, 教授 (30109235)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 教職の専門性 / 教師の資質・力量 / 同僚性・協働性 / 使命感・誇り・自信 / 教師のパフォーマンス / 学校教育の質 / 学校経営 / 教育政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、教師の資質・力量・誇り・パフォーマンス(NAPP)と学校教育の質(SQP)の実態と規定要因を明らかにするために、①文献研究、②OECDのTALIS2013など既存調査の結果の検討、③独自調査のデータの分析、④学校・教委等の訪問調査を行う。 4年継続・初年度の平成27年度は①②と③独自調査の実施準備を行った。それらは次年度以降に向けての準備作業であるから、ここでは②の検討成果の内、次の一点に絞って紹介する。 TALIS2013の結果では、日本の教師の仕事時間の長さ(参加国平均38時間に対し日本54時間)と自己効力感の著しい低さが注目された。自己効力感12項目について「非常によくできている」「かなりできている」の合計回答割合の参加国平均は9割台2項目、8割台8項目、7割台2項目だったが、日本は5割台3項目、4割台4項目、2割台3項目、1割台2項目であった。この日本の著しい低さについて国立教育政策研究所編『教員環境の国際比較』は、日本の教師は「謙虚な自己評価を下す傾向、目標水準が高い等」による可能性があるとコメントしている。当該質問項目の選択肢は「非常によくできているA lot」「かなりできているQuite a bit」「ある程度できているTo some extent」「まったくできていないNot at all」であり、日本の教師の大半は「ある程度」を選択したから、上記コメントは部分的に妥当と考えられるが、次の二点で更なる検討が必要である。①上記のような4件法での「かなり」と「ある程度」との受け止め方の違い(「ある程度」を肯定的と見るか否かや「あまりできていない」と訳していたら違う結果になった可能性)、②「かなり」の選択を回避した実質的な背景要因は何か(たとえば1990年代以降の教師バッシングや教員政策などの影響)。この二点は次年度以降の主要な探究課題の一つとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【本研究の枠組と分析課題】教師の資質・力量・誇り・パフォーマンス(NAPP)と学校教育の質・パフォーマンス(SQP)を目的変数、①教師の意識・実践、②学校経営と同僚性・協働性、③学校教育環境(子ども・保護者の実態)、④教育政策・教育言説(マスコミ等の見方)を主な規定要因とし、次の三つの分析課題を設定。 (1)③④の「学校教育基盤」の構造変容・揺らぎと教育実践の現代的な難しさ・課題。(2)NAPPと①②の関連構造・改善課題。(3) NAPPとSQPの関連構造に関する総合的検討。 【平成27年度の研究計画と進捗状況】上記三つの分析課題のうち(1)と(2)を中心に、次年度以降に向けての基礎作業を行う。その進捗状況は以下の通り。 (1)「学校教育基盤」の構造変容・揺らぎと教育実践の現代的な難しさ:政策文書・マスコミ報道・関連図書と国内外の研究者等との意見交換により構造変容・揺らぎの特徴と教育実践の現代的な難しさ・課題について検討し所期の目的を達成した(「13.研究発表」欄の二論文として公表)。 (2)NAPPと①②の関連構造・改善課題:調査データの分析と訪問調査を行う予定であったが、(a)訪問調査は日程調整ができず、個々のメンバーの学外活動の一環として行うにとどまった。(b)調査データの分析は、OECDの教員調査(TALIS2013)、横浜市教育委員会2013年実施の教職員業務実態調査、本研究代表者による2000年の日中英3カ国比較教員調査、「日本の教育を考える10人委員会」の2014年教員調査の結果を検討し、教員環境の実態・特徴と課題について整理し、(c)次年度実施の独自調査の調査票原案を作成した。 【「(2)おおむね順調に進展している」とした理由】上記(2)(a)の訪問調査が不十分だった点、及び同(c)のプリテストが2016年5月にずれ込んだ点を除いて計画通り進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
4年継続の2年目に当たる平成28年度は、上記【現在までの進捗状況】欄に記載した三つの分析課題について、以下の計画により研究を進める。 1)平成27年度(初年度)に着手した「(1)「学校教育基盤」の構造変容・揺らぎと教育実践の現代的な難しさ・課題」の分析作業と「(2)NAPPとその規定要因①②の関連構造・改善課題に関する分析」(既存調査データの分析と訪問調査)を引き続き実施する。 2)本研究による独自調査としてのWebアンケート調査を実施し、そのデータの分析を行う。この調査は、調査会社に委託して実施するが、調査対象者は公立小中学校教員で、同調査会社のモニター教員1000名と、本研究プロジェクトチームが教育委員会・校長会等を介して調査協力依頼文書を配布してもらい、本研究プロジェクト開設のWebサイト宛てに「調査協力応諾」の回答を送ってくれた教員(ビジター)1500名(合計2500名)とする予定である。なお、この調査は、平成29年度にも同じ教員を対象に実施するパネル調査である。(補助金・直接経費の約半分は、調査会社への委託費をはじめ、この調査の関連諸経費に充てられる。) 3)上記2)のWebアンケート調査の分析結果を取り纏め「調査研究報告書」として印刷公表する。 4) 前記の第3分析課題「(3) NAPPとSQPの関連構造に関する理論的・実証的な総合的検討と政策的・実践的示唆の抽出」に着手し、その成果を、上記1)及び2)の成果と合わせて、学会誌等への論文寄稿と国内外の学会等での発表を行う。
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Remarks |
作成準備中
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Research Products
(9 results)