2016 Fiscal Year Annual Research Report
学習者間の「教え-学び合い」過程における教育効果の脳生理学的解明
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15H03499
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
黒田 恭史 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70309079)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前迫 孝憲 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (00114893)
江田 英雄 光産業創成大学院大学, 光医療・健康分野, 教授 (00395237)
岡本 尚子 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (30706586)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 教育学 / 数学教育 / 教育神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳科学の教育学への応用は,学校現場での実際の学習場面に近い環境での脳活動計測実験の段階に入りつつある。今後は,実験室レベルから,学校現場の教室レベルに,また,単独被験者による統制された実験環境・実験タスクから,複数被験者による自由度を確保された実験環境・実験タスクへとシフトしていくことが期待されている。 そこで本研究の目的は,実際の授業場面で理論的・経験的に活用されてきた,学習者同士の「教え-学び合い」過程に着目し,教える側と学ぶ側の役割交替による教育効果を,脳生理学的に解明することである。役割交替の教育効果を,行動観察やインタビュー等に加え,生理学的視点からそのメカニズムを分析し,より効果的な役割交替のあり方や,学習者が教えるという行為の教育的意義,教師の適切な学習者間への関与の仕方について検討する。 本年度は,2名一組の学習者に脳活動計測装置を装着し,同時計測を実施した。各学習者において,教える側と学ぶ側が交替する過程において,どのような脳活動の特徴・差異が生じるのかを生理学的に検討した。同時脳活動計測実験の結果,「教える」行為を行っている時間帯と,「学ぶ」行為を行っている時間帯において,同一被験者の脳活動データは,異なる形状を示すことが明らかになった。これらの結果を踏まえ,学習者の「教える」という行為に着目して,そのことが,学習者本人の理解促進にどのような影響をもたらしているのかについて検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学びあいが可能な実験タスクの開発と,二人同時計測実験を実施し,同一被験者における「教える」場面と「学ぶ」場面における脳活動の特徴を明らかにすることができた。両者の脳活動のデータ形状が,合致するものではなかったことから,「教える」という行為が,「学ぶ」という行為とは異なる学習効果をもたらす活動であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,今年度の研究で明らかになった「教える」行為と「学ぶ」行為における脳活動データの相違が,教育学的にどのような意味を有しているのかを,脳活動データを,行動観察,インタビューなどのデータと照合しながら検討していくことである。 これらを通して,本研究の最終目的である,より効果的な役割交替のあり方や,学習者が教えるという行為の教育的意義,教師の適切な学習者間への関与の仕方について接近を試みる。
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