2015 Fiscal Year Annual Research Report
明治期図画手工教科書データベース構築に向けた総合的調査研究
Project/Area Number |
15H03502
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
赤木 里香子 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (40211693)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 一夫 茨城大学, 教育学部, 教授 (70114014)
角田 拓朗 神奈川県立歴史博物館, その他部局等, その他 (80435825)
山口 健二 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (90273424)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 美術教育史 / 明治期図画手工教科書 / データベース / 図画教育 / 鉛筆画 / 毛筆画 / 検定教科書 / 五姓田派 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、明治期に刊行された図画手工教科書の全容解明と、その保存および活用に向けた総合的調査を目的とする。 平成27年度には、まず明治期図画手工教科書の所蔵状況調査を実施した。総合目録の作成に向けて、私家版を含めた既存の目録や刊行記録等を収集し、記載されたデータを集成する作業を進めると同時に、研究代表者・分担者の所属機関が所蔵する資料について、デジタル画像データの作成に着手した。特に、研究分担者角田の企画による「没後100年 五姓田義松 最後の天才」展(神奈川県立歴史博物館主催)に関連し、五姓田派が関与した図画教科書に着目した。 また、明治期の鉛筆画教科書における欧米の影響を探るうえで、ドイツのミュンヘン中央美術史研究所とルートヴィヒ・マクシミリアン大学を中心に進められている研究プロジェクト Episteme der Linien: Theorien und Praktiken von Zeichnen und Zeichnung: 1400-2000 のメンバーと情報交換を行い、画像データベースの構築と活用に関しても示唆を得た。さらに同プロジェクトの一環として、ハイデルベルク大学図書館で開催された西欧の絵手本・図画教科書類の展覧会 Punkt, Punkt, Komma, Strich: Zeichenbucher in Europa ca.1525-1925 にて現地調査を行い、明治初期の鉛筆画教科書との比較研究に関する資料を収集した。 年度末の平成28年3月には、美術科教育学会の一般発表および美術教育史研究部会において、研究成果の報告を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
明治期図画手工教科書の所在調査については未調査の機関等も残されているが、既存目録の整理と統合は順調に進んでいる。特に研究分担者金子により、明治19年から明治33年までの小学校検定教科書、それ以降の中学校検定教科書の発行状況が明らかにされたことは大きな前進であり、従来の断片的な情報では捉えきれなかった教科書群の全体像解明に向けた着実な成果と考えられる。 デジタル画像データ作成については、人件費を要する組織的なデータ処理は次年度に持ち越して主に撮影用機材を充実させ、データ作成の仕様を慎重に検討中である。 なおドイツのプロジェクト Episteme der Linien により刊行された図書 Lernt Zeichnen! : Techniken zwischen Kunst und Wissenschaft に、研究代表者赤木、研究分担者山口が依頼を受けて執筆した論文 Drawing Education in the Late 19th Century: The Case of Japan が掲載され、平成28年10月に同プロジェクトがミュンヘンで開催する図画教育史に関する国際シンポジウムに招待を受けた。美術教育史に関する国際的な比較研究の機運が盛り上がっていることが確認でき、さらなる研究交流の深化が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、明治期図画手工教科書の所在調査とデジタル画像データ化を進める。これまで注目してきた明治前期の鉛筆画教科書だけでなく、明治中期の毛筆画教科書についても調査を進め、その多様性を明らかにしたい。さらに明治後期については、尋常小学・高等小学用国定教科書から中等教育用図画教科書、手工および用器画教科書までを視野にいれて作業を進める。 画像データベースの設計についても具体的に検討を開始する。デジタル化を完了した画像データを体系的に整理し、試験的にモニターに配布して、明治期図画手工教科書を縦覧することで見えてくる美術教育史の課題や、美術教育の現場で画像データベースをイメージ・ソースとして活用する方法等を探る。 ミュンヘンにおける図画教育史に関する国際シンポジウムへの参加は、当初の計画にはなかった展開であるが、この機会に研究交流を深め、美術教育史に関する国際共同研究の実施に向けて基盤を固めたい。
|