2017 Fiscal Year Annual Research Report
幼児期・児童期の情動発達アセスメント・スケールの開発と保育・教育への応用
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15H03508
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
本郷 一夫 東北大学, 教育学研究科, 教授 (30173652)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 千枝 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (00412916)
相澤 雅文 京都教育大学, 教育学部, 教授 (10515092)
平川 久美子 石巻専修大学, 人間学部, 助教 (30711246)
須田 治 首都大学東京, 人文科学研究科, 客員教授 (50132098)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 情動発達 / 幼児 / 児童 / アセスメント・スケール |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は以下の3点について研究を行った。 1.児童の情動発達の特徴に関する研究: 小学校1年生~6年生までの児童2142名(「気になる」児童1071名、「気になる」児童と年齢・性がマッチングする典型発達児1071名)の担任が捉えた情動発達の特徴のデータを分析したところ、次の点が明らかになった。(1) 「気になる」児童は典型発達児と比較して、<抑制><理解><共感>、とりわけ<理解><共感>の情動領域の発達が遅れていることが示された。(2) 「気になる」子どもの行動特徴としては、<ASD傾向>よりも<行動調整の困難さ>の方が、情動発達の遅れと関係していることが示唆された。(3) これらのことから情動発達支援では、行動調整に困難さがある子どもに対して、情動理解の促進を目的としたプログラムが有効であることが示唆された。 2.幼児の情動表現の発達に関する研究: 保育所の5歳児を対象とした情動表現に関する1年間の保育実践を分析した結果、(1) 5歳児は否定的情動よりも肯定的情動を多く表現すること、(2) 情動の種類と色との関係は固定的ではなく、自分の情動状態を表すために最も多く用いられる水色はポジティブな情動もネガティブな情動も表現するのに用いられる。(3) 自分の情動状態に対する言語表現は時期を追って増加するわけではないが、情動が生起した理由や背景に関する言語表現は時期を追うごとに増加した。 3.ASDの特徴をもつ青年に関する研究: ASDの特徴をもつ青年の情動的特徴を理解するためには、縦断的な支援が不可欠であり、今後、健常者とアスペルガー障害者と年齢や性別などをマッチングさせて比較研究を行うことが重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は児童期の比較的大規模データを分析することにより、「気になる」児童の情動発達の特徴を明らかにすることができた。これは、児童期における情動のアセスメントスケールの開発に大きく寄与すると考えられる。また、幼児期の保育実践データの分析から、情動を表現させる活動が情動理解や情動抑制につながることが示唆され、情動制御に困難をもつ幼児・児童の支援プログラムの作成に寄与すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、これまで得られたデータに基づき、(1) 情動発達アセスメント・スケールを作成すること、(2) 幼児期・児童期において情動制御に困難をもつ子どもに対する支援プログラムの作成すること、(3) 支援プログラムの適用結果に基づき、情動発達アセスメント・スケールを完成させ、それに基づく情動発達支援プログラムを完成させる計画を立てている。
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