2015 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚障害児の発達過程を考慮した補聴器・人工内耳の評価法と視聴覚の活用支援
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15H03511
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
中川 辰雄 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (00164137)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須藤 正彦 筑波技術大学, 学内共同利用施設等, 教授 (90206566)
佐藤 正幸 筑波技術大学, 学内共同利用施設等, 教授 (50222021)
井上 正之 筑波技術大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (90553941)
松本 末男 筑波大学, 学内共同利用施設等, 教授 (80642834)
高橋 優宏 横浜市立大学, 医学部, 講師 (50315800)
横尾 俊 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, その他部局等, 研究員 (90300714)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 聴覚障害 / 視聴覚融合 / 補聴器 / 人工内耳 |
Outline of Annual Research Achievements |
単音節、単語、文の三種類の音声刺激を用いて、騒音下において視聴覚一致刺激と不一致刺激をそれぞれ提示して、聴覚提示した時に比べて識別成績にどのような効果が得られるかについて検討した。 対象者は日常生活において補聴器を使用して、聴者とは音声言語によるコミュニケーションを行っている聴覚に障害がある大学生5名を対象とした。また、対象群として同年齢の聴者の大学生4名についても対象とした。 方法として、音声刺激として単音節5個、単語5個、そして文5個を用いた。それぞれの音声刺激を聴覚提示する条件と視聴覚一致刺激と不一致刺激を提示する条件を設けて、ランダムに提示した。音声刺激はスピーチノイズと同時に1個のスピーカから提示した。スピーチノイズの提示レベルは70dB(SPL)に固定し、被験者の回答の正誤によって音声刺激の提示レベルを3dBステップで変化させた。正答の場合は音声の提示レベルを3dB低下させ、誤答の場合は3dB増加させて、50%の正答率が得られる音声の提示レベル(以下、語音聴取閾値)を求めた。検査は防音室内でコンピュータ制御によって行った。 結果と考察、聴覚障害の5名の学生を検査した結果、S1からS3の3名については、70dB(SPL)のスピーチノイズの提示下では語音聴取閾値を求めることができなかった。S4については単語だけ、S5については三種類の語音で語音聴取閾値を求めることができた。しかし聴者で見られるような視聴覚一致刺激の方が不一致刺激に比べて語音聴取閾値が低下する特徴が見られたのは、S4の単語とS5の文についてだけで、S5について単音節と単語について語音聴取閾値はほぼ同じような値を示した。聴覚に障害あると、騒音下では聴者で見られた視聴覚知覚の柔軟な特徴が見られない可能性が考えられる。今後はさらに聴覚障害の被験者の数を増やして検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、音声刺激にその映像刺激(以下、視聴覚一致刺激という)と、それとほぼ同じ長さの無関係な音声刺激を産出する映像刺激(以下、視聴覚不一致刺激)を提示する条件を用いて、静穏下における視聴覚統合の効果を9名の聴覚に障害がある学生に対して行った。その結果、1名を除きすべての聴覚障害者から、提示した音声刺激に関係なく、その効果が確かめられた。すなわち、視聴覚一致刺激の方が視聴覚不一致刺激に比べて静穏下においては正答率が高く、聴覚障害者も視覚情報によって聴覚情報を補っていることが見られた。 では同じことが騒音下においても当てはまるのであろうか。ここではこれまでと同じように単音節、単語、文の三種類の語音刺激を用いて、騒音下において視聴覚一致刺激と不一致刺激をそれぞれ提示することによって、聴覚のみで提示した時よりも識別成績にプラスの効果が得られるかどうかについて、日常生活において、補聴器を使用して音声言語によるコミュニケーションを行っている成人の聴覚に障害がある大学生6名を対象とした。また、対象群として同年齢の聴者の大学生4名について検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の課題は「聴覚障害児の発達過程を考慮した補聴器・人工内耳の評価法と視聴覚の活用支援」にある。これまで、研究の対象を音声とそれに伴う口唇情報に限って補聴器と人工内耳の評価法の研究を行ってきた。今後の研究の推進方策として、視覚情報を口唇だけにとどめず、手話や指文字、文字を含む情報にまで拡大して検討する。このように研究対象を拡大したのは、手話や指文字さらに文字は音声と同時に提示それたり使用することが多いためである。それによって、さらに多くの聴覚障害児・者の補聴器と人工内耳の日常生活に即した評価が可能になるものと思われる。
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Research Products
(3 results)