2016 Fiscal Year Annual Research Report
The development of cooperative universal design teaching method in the regular classroom
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15H03517
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Research Institution | National Institute of Special Needs Education |
Principal Investigator |
涌井 恵 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, 情報・支援部, 主任研究員 (80332170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 浩司 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (40738168)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 協同学習 / 発達障害 / 通常の学級 / 多重知能 / ユニバーサルデザイン / 自己調整 / メタ認知 / 学び方を学ぶ |
Outline of Annual Research Achievements |
発達障害のある子どもは、学習の困難のみならず社会性や仲間関係に課題を抱えているが、通常の学級での指導に関する研究は依然として遅れている。これに対し、先行研究[平成24-26年度文部科学省科学研究費若手研究(B)「発達障害児と共に学ぶ通常学級の学び方を学ぶ学習と協同学習を組合わせた指導の開発」(研究代表者:涌井恵、課題番号24730774)]では「学び方を学ぶ」学習と協同学習を組み合わせることで、発達障害の多様な認知特性にも、他の典型発達児の学習内容にも対応した通常の学級におけるユニバーサルデザインな指導方法を開発し、研究が深化するにつれ、学校全体で取り組むことの有用性が見えてきた。 しかしながら、「学び方を学ぶ」ことや協同学習に馴染みのない教員が実践する場合の教員研修や、実践を学校全体や家庭学習へ拡げるための教材開発が課題として残された。 そこで本研究では、発達障害のある子どもも共に学ぶ通常学級において、全ての子どもの学力向上を実現するために、「学び方を学ぶ」学習と協同学習の組み合わせによる指導実践を学校全体へ拡げるための研修プログラムの開発すると共に(研究A)、実践スタートキットを作成し(研究B)、さらに「学び方を学ぶ」学習の充実・定着のための家庭学習用アプリケーション等の教材の開発(研究C)を行うことを目的としている。 本年度は、研究Aについては研究協力校で校内研修を行いデータ収集を行う。また研究Bについては研究協力校において総合的な学習を活用した全校的な実践プログラムの検討を開始する。さらに研究Cにおいては、中高性向けの家庭学習用アプリケーションの試作を行うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)研究A「指導実践を学校全体へ拡げるための研修プログラムの開発」:本年度は研究協力校にてアサーション・スキルに関する校内研修を行った。現在、その効果や課題について検討中である。アサーション・スキルに関する指導内容を校内研修の内容に含めた理由は、意見の異なるものを排除する同調学習に陥らないようにするために、教師、また協同学習の参加者となる子どもたちにとっても必須事項となると考えたためである。本年度はさらに、研究Bにおいて実施した研究協力者の対象学級での指導場面VTRについて研修プログラムでの使用許可を得ることができ、映像素材を収集することができた。 2)研究B「実践スタートキットの開発」:昨年度に引き続き、研究協力校において、総合的な学習の時間を活用して、3~6年生で「学び方を学ぶ」学習の実践を行った。各学年で、子ども達に記憶や注意、やる気といった学習のメタ認知に関わる事柄に気づきを促し、その内容を教科の学習においても活用することができた。また、学年間で児童内容の調整と内容の系統性について検討し、昨年度版の改良を行うことができた。 3)研究C「『学び方を学ぶ』学習の充実・定着のための家庭学習用アプリケーション等の教材の開発」:昨年度試作した中高生向けのタブレット端末用のアプリケーションののうち、注意に関するゲームについて、使い勝手の修正を行った。しかし、対面授業と異なり、アプリケ―ションの形式で設問を提示したり、やり方を示したり、正答をフィードバックすることについての課題はまだ残った。 4)第31回国際心理学会議(ICP2016, 2016年7月開催)において、ポスター発表を行った。その他、日本LD学会および日本授業UD学会の学会誌の特集論文として本研究に関連する論文が掲載された。 以上のように、本年度予定していた検討事項についてはおおむね検討することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)研究A「指導実践を学校全体へ拡げるための研修プログラムの開発」:今年度は研修プログラムの実施対象を自治体での研修ではなく学校における校内研修に絞って、プログラムの構成や内容の検討を行い、実施手引きと教材のセットの試作案を作成する。最終年度にはアンケート調査やインタビューによって、その研修内容の妥当性や有用性について検討し、問題点は改良する。 2)研究B「実践スタートキットの開発」: 平成27年度と同様に、研究協力者の学級(通常学級)において、複数の教科において「学び方を学ぶ」 学習と協同学習を組み合わせた授業実践と実践データの分析を行い、効果的な内容を取り入れ、「実践スタートキット」の改良を行う。平成28年度に行った総合学習による学校全体の指導計画の効果や課題について分析し、 改良点について探る。研究Aの教材セットの試作とも関連づけて進める。 3)研究C「『学び方を学ぶ』学習の充実・定着のための家庭学習用アプリケーション等の教材の開発」:平成27年度に試作したタブレット端末用のアプリケーションのさらなる改良を行う。『学び方を学ぶ』の電子テキスト化を優先し、試作品を中高生かつ/または 、1名の研究協力者の担任する通常学級または一部の子どもに活用してもらい、問題点や改良点を探る。 4)学会発表投稿論文の執筆:これまでの研究成果について学会発表する。また、研究Bに関し、「学び方を学ぶ」学習と協同学習を組み合わせた授業実践を学術論文としてまとめ、関連学会に投稿する。
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Research Products
(8 results)