Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,MEMS技術をベ-スに,非破壊で,水分・栄養物質動態をin-situ観察可能な超小型「維管束(道管流/師管流)センサ」を実現し,作物の生産性向上や高品質果実の安定生産に具体的に貢献すること,更にセンサ情報を統合し,植物の生育に最も重要となる作物や果樹等の新梢末端や果柄等の細部を含む植物全体での時空間的な水分・栄養物質動態の測定を行うことを目標としている. これに向けて,H27年度は,まず道管流センサについては,①センサチップを植物に巻きつけ・固定するためのフィルム実装方法を考案し,圃場での利用を模試した試験(フィルム上に固定取れたセンサ部の機械的曲げ試験や水暴露実験等)により,その有用性を確認した.また,植物末端での多点同時計測を狙いに,②4chの駆動電源付きデ-タロガ-試作を行い,試作したセンサ等を用いて,その基本動作を検証した.更に③センサの高能化に関しては,新規に道管内の栄養分を検出するための電気伝導率センサのプロトタイプを製作し,要求される検出感度を実現するには,プロ-ブ部に被覆するナノメッキ構造(表面積増大)が重要なことを明らかにした. 続いて,「師管流センサ」については,プロトタイプを製作し,カンチレバ-上に形成したセンサを各機能要素(マイクロヒ-タ,温度センサ,電気伝導率センサ)が,所望の正常動作をすることを確認した. 以上のように,道管流センサ,師管流センサについて,当初の目標としたセンサ単体での動作検証に成功すると共に,今後の測定に必要な機材(多ch駆動電源付きデ-タロガ-等)が予定通り試作でき,次年度の疑似植物実験や圃場での実験に向けた取り組みが,予定通り,推進することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は,道管流センサについては,(1)センサのフィルム実装による植物への装着・固定,更に(2)簡便な耐環境試験等の実施による外界環境測定に関する安定性の確認,更に(3)圃場での測定に向けた多ch駆動電源付きロガ-試作等を目標に掲げたが,全て,予定通りに成果が得られたこと,また師管流センサについては,カンチレバ-上にマイクロヒ-タ,温度センサ,電気伝導率センサ等を機能集積化したプロトタイプの構造設計・製作を行い,その各部の動作検証までを目標としたが,マイクヒ-タ(40-50℃@数V),温度センサ(pn接合型ダイオ-ド:-3.3~-3.5mV/℃),電気伝導率センサ(師管/道管に相当する電気抵抗の違い)の基本動作検証を確認できた. 以上のことから,本件研究課題について,予定通りの進捗が得れていることから,「概ね予定通りに進捗している」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては,H28年度は, 「道管流センサ」については,今回試作したセンサの高機能化検討を更に推進するとともに(水分動態センサと栄養分動態センサの一体化),製作したセンサシステムを用いて,環境が制御された人口気象器内で,植物環境(温度,湿度,CO2,光量等)と植物生理(樹液流量等の水分動態)との関係を詳細に調べる実験を行う. また,「師管流センサ」については,前年度のプロトタイプ試作の結果を受け,センサの高性能化を図り, まず疑似植物系で①流れの向きの測定, ②微少流量測定, 道管/師管の位置検出により,③師管液の採取・成分測定が可能なことを確認し,センサの有用性を実証する. これらの基本特性の把握を通して,最終年度の圃場等での実験に繋げる.
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