2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H03561
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邉 聡 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00292772)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南谷 英美 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (00457003)
安藤 康伸 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00715039)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 表面・界面物性 / 計算物理 / ナノ材料 / 電界効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一原理電子状態計算を主に用い、情報デバイスやエネルギー変換デバイスの動作の鍵を握る絶縁層・電解質層-電極界面近傍の数原子層・数分子層における印加電場による状態変化を解明することを目指して研究を進め、平成27年度は主に以下の成果を得た。 1)有機分子層:オリゴチオフェン誘導体薄膜を対象に、標準的密度汎関数法に外部電場ポテンシャルを導入する方法で、電場印加による電子状態変化を解明すべく研究を進めた。まず古典力場計算でおよその構造を求め、次に密度汎関数法で最適化することによりスラブモデルの構造を決めた後、電場印加下の電子状態計算を行った、その結果、末端のヘキシル基において電場による電荷密度変化が大きいことを明らかにした。状態密度等について、さらに解析を進めつつある。 2)原子層物質:二層グラフェンの電子状態の電場応答について、予備計算を踏まえてより詳細な検討を行った。標準的密度汎関数法に電場を導入する方法に加え、有効遮蔽媒質法で電荷ドーピングの影響も調べた。単層グラフェンとは異なり電場に対して誘電体的な応答をみせることを示唆する結果を既に得ていたが、その誘電率が電場強度と共に減少することを明らかにし、また二層グラフェンへの電荷ドーピングと共に、バンドギャップが最初増加し、その後減少に転じることを明らかにした。 3)誘電体層:SrRuO3 (金属)/BaTiO3 (強誘電体)/SrTiO3 (常誘電体)/SrRuO3 (金属)の多層膜構造について軌道分離法を用いて電場印加下の密度汎関数法計算を行い、連続体モデルを用いた先行研究同様、分極ドメイン構造によって負の誘電率効果が抑制されることを確認した。さらに、半導体デバイスでは標準的といえる 0.2 V 程度の電圧範囲で分極ドメイン構造が消失し、負の誘電率が発現するというメカニズムを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機分子層の研究では構造モデルの決定に予想外に時間をとられる等、いくつかの問題もあったが、一方で、二層グラフェンの研究では誘電率の電場依存性やバンドギャップのドープ電荷量依存性等の新たな知見が得られ、また誘電体層の研究では本研究開始以前から進めていた研究を、負の誘電率の発現について有意義な知見を得る形でまとめることができた。 以上から、全体としては最終目標に向かってほぼ予定通りの進捗と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
有機分子層については、オリゴチオフェン誘導体薄膜に関し、バンド形状・状態密度等の電場依存性を詳しく解析することにより電場による状態変化のメカニズムを解明すると共に、分子を変えた計算を同様に行い、分子種依存性を解明する。 平成27年度は予備計算にとどまった抵抗変化素子および他の新規イオン移動型記憶素子におけるイオン移動について、電場印加下のイオン移動について本格的計算を開始すると共に、連続体近似と連成した計算を試み、メゾスケールでの電位分布やイオン分布も考慮した理論解析手法の確立に着手する。 原子層物質については、MXeneについて電場ゼロでの予備的計算が進んだことを踏まえ、電場印加下の計算を進め、既に行った二層グラフェンの結果と照らし合わせ、電子状態変化の統一的理解を目指す。
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