2015 Fiscal Year Annual Research Report
モード同期光学フォノンを用いた超広帯域光発生の研究
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15H03575
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
西岡 一 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (70180586)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河仲 準二 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 准教授 (50264362)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 非線形光学 / 光学フォノン / 量子干渉 |
Outline of Annual Research Achievements |
筆者は2つのフォノンが同期して生成・消失すると、フォノンエネルギーの差分や運動量の差分を光子のエネルギー・運動量と相殺できる事を初めて示した。この過程は量子干渉であり、光吸収・放出を打ち消したり、熱振動などの擾乱を打ち消したりすることが可能になる。量子的には、2つのフォノンが同期して生成・消滅する過程であり、互いにもつれ合いの関係にある。 本研究は、差動2フォノン過程を用いてフォノンモード間の位相同期を行い、光の吸収・放出を制御しようとするものである。 今年度は、新たに励起レーザーシステムを作成し、2つの波長で同時励起できる再生増幅システムを構築した。このシステムでは、広帯域光共振器を用いて広帯域で誘導散乱光を閉じ込めると同時に、キャビティダンプによってこれを取り出せるように設計している。さらに、半導体レーザーを用いた狭帯域2波長レーザーを製作して、狭帯域光の注入動作を可能にした。 このレーザー共振器中にCVD法により製作した単結晶ダイヤモンドを挿入し2つの波長で同期励起を行2つのフォノンの差周波に相当するサイドバンド光の発生実験を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レーザー装置の設計、製作は順調に進んだ。 一方、固体材料中では、光学フォノンの寿命は短く誘導ラマン散乱、とりわけ2フォノン励起では、非常に高い光強度が要求される。狭帯域化のためにはフーリエ関係から長い光パルスが必要であるが、そのために必要な光エネルギーが増加して光学素子の光損傷が生じた。特に、広帯域光学素子は光損傷に弱い。そのため、実験しうるスペクトル幅、パルス幅、光強度の間で相互に制限が生じている。 今後は、用いる光のパルス幅を光学フォノンの寿命に合わせて制御して光学損傷以下の光強度で誘導散乱が得られるように最適化を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.高次モードの生成(差周波ラマンコムの発生) ラマン媒質(CVD 単結晶ダイヤモンド)を光共振器内に配置しこれを赤外レーザーで励起してストークス光を発生させる。さらに、2波長レーザーによって励起して多波長のストークス光を発生させる。位相整合条件による横分散を補償して多波長発振を行う。スペクトル・シアリング計測を行って発生している光のスペクトル位相を計測する。計測結果を基に共振器内部の群遅延分散を補償してモード同期発振を試みる。このとき、フォノンモードの差周波数は、共振器の縦モード間隔の整数倍である必要がある。誘導ラマン散乱の利得が十分高い場合には、近隣の縦モードに自動的に引き込まれる事が予想される。もし引き込みが起こらない場合には電歪素子などを用いて波長レベルで共振器長を調整して、フィードバック制御を行う。発生光のスペクトル位相計測繰り返し、チャープミラーを用いて共振器内群遅延分散を微調整して発振スペクトルの広帯域化を図る。現在問題となっている光学損傷に対しては、最小の励起エネルギーで必要な励起光強度が得られるようにパルス幅を最適化する予定である。
2.反ストークス光コムの発生 本方法を用いると超広帯域の反ストークス光が発生する。これは、超短パルス列となったストークス光により、反ストークス光が相互位相変調を受ける為と考えている。狭帯域2波長励起では、モードが分離されて超広帯域の光コムが生成される事が予想される。実験によりこれを確かめる。
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Research Products
(3 results)