2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15H03582
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
斧 高一 京都大学, 工学研究科, 名誉教授 (30311731)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江利口 浩二 京都大学, 工学研究科, 教授 (70419448)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | プラズマ加工 / プラズマ化学 / 表面・界面物性 / 半導体超微細化 / 超微細加工形状 / 反応粒子輸送 / プラズマエッチング / プラズマ・表面過程揺動 |
Outline of Annual Research Achievements |
塩素・臭化水素プラズマによるシリコン (Si) エッチングにおけるナノスケールのプラズマ・表面相互作用の特徴,およびその相互作用による表面ナノラフネス・ナノ周期構造 (リップル) 形成について,モデリング・シミュレーションと基板表面分析により,形成機構の解析を進めた.具体的には,(1)独自の三次元原子スケールセルモデル (ASCeM-3D) によるエッチング加工形状シミュレーションをさらに高度化して,ラフネス・リップル形成の入射イオン表面反射率に対する依存性を詳しく調べ,反射率が10-20% 程度減少するとラフネス・リップル形成が生じないことを明らかにした.さらに,リップルの表面・断面形状や伝播速度・方向を解析し,リップル断面はイオンの基板表面への入射角度に依存した鋸歯 (sawtooth) 状形状を有し,表面をイオン入射と同じ方向にイオン入射角度に依存した速度で伝播することを示した.(2)古典的分子動力学 (MD) シミュレーションをさらに高度化して,エッチング基礎パラメータ (エッチング収率,反応生成物の種類・速度分布,入射イオン反射率など) をより詳しく調べるとともに,分子イオンと表面との相互作用の特徴を解析し,分子イオンの表面での分解に起因する基礎パラメーへの影響を明らかにした.(3)ASCeM-3DやMDとの比較のもと実験を進め,ラフネスの成長が抑制されるプラズマ条件 (表面反射率の小さいイオンが支配的なプラズマ条件) では,ラフネスの大きい基板 (表面が粗い基板) も表面平滑化されること,リップルはASCeM-3Dで予測されたとおりイオン入射角度に依存した鋸歯状断面形状を有すること,を実証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的のうち,ASCeM-3Dモデルはほぼ完成に近づき,プラズマ微細加工形状シミュレーションは実験における「表面ナノラフネス・ナノ周期構造 (ラフネスの大きさ,リップルの表面・断面形状や伝播速度・方向) のプラズマパラメータ依存性」の多くをほぼ説明し再現できるようになった.また,ASCeM-3DとMDシミュレーションの共同により明らかになったラフネス・リップル形成に大きな影響を及ぼす入射イオンの表面反射率について,両者の解析が進み,種々のイオン種 (原料ガス・反応副生成物イオン,原子・分子イオン) ごとのエッチング基礎パラメータが抽出され,それらの影響が明らかになった.さらに,ASCeM-3D とMDにより得られた知見をもとに,ラフネス・リップル形成とプラズマパラメータとの相関を詳しく調べることにより,ラフネス・リップルの成長/抑制にかかわるプラズマ条件が明らかになった.初年度の「基板表面へのイオン斜め入射を実現してのプラズマ・表面相互作用による表面ナノ周期構造形成」の実験実証に引き続き,次年度 (平成28年度) は「ラフネスの成長が抑制されるプラズマ条件 (表面反射率の小さいイオンが支配的なプラズマ条件) でのラフネスの大きい基板 (表面が粗い基板) の表面平滑化」,「シミュレーション予測どおりのイオン入射角度に依存したリップルの鋸歯状断面形状」を実証した.イオンの基板表面への入射角度に依存して発現する表面ナノ周期構造は,これまで希ガスイオンビームとSiとの相互作用において理論的・実験的に知られるが,プラズマによるナノ周期構造形成の研究と実証は本研究が世界で初めてであり,本研究の目的達成の道筋の8~9合目あたりまでさしかかった.
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Strategy for Future Research Activity |
本最終年度 (平成29年度) は,プラズマ・表面相互作用にかかわる物理・化学をシミュレーションと初年度・次年度の実験とを比較して解析することにより,表面ナノラフネス・ナノ周期構造形成の機構解明とモデリングを高度化し,表面ナノ周期構造形成・制御法を確立する.具体的には,(1)ASCeM-3Dでは,ナノラフネス・ナノ周期構造形成にかかわるモデルを完成するとともに,プラズマパラメータに対する依存性をさらに詳しく調べ,これまでの実験結果と系統的に比較する.特に,ナノ周期構造の成長過程・形状・伝播に注目し (伝播方向はイオンビームスパッタリングによる表面ナノ周期構造形成において理論と実験が矛盾する項目),ナノラフネス・ナノ周期構造形成におけるイオンの表面散乱/反射の影響を解明する.(2)MDでは,エッチング反応副生成物イオンとSi 基板との相互作用に関する解析をより高度化し,得られた基礎パラメータをASCeM-3D モデルに提供して,ナノラフネス・ナノ周期構造形成にかかわる原子論的機構を考察する.特に,副生成物分子イオンの基板表面での分解率・反射率に注目し,ナノラフネス・ナノ周期構造形成に影響を及ぼす分子イオン種・原子イオン種を明らかにする.さらに,(3)成果のまとめとして,プラズマ・表面相互作用によるナノラフネス・ナノ周期構造形成に関する形成機構モデルと形成・制御法について,学術的・実用的完成度を総合的に評価するとともに,実際のプラズマプロセスへの適用 (ナノラフネス・ナノ周期構造の抑制/増大プロセスなど),およびナノ周期構造のマイクロデバイスへの応用 (ナノグレーティングなど) を提案する.
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