2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H03584
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
杤久保 文嘉 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (90244417)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 放電プラズマ / プラズマ電気化学 / 液相反応 / ナノ粒子生成 / 磁性粒子 / 溶存酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、大気圧直流グロー放電を用いた気液界面プラズマをプラズマ電気化学と位置付け、その学術基盤を確立し、液中での材料科学へと展開することである。この目的を実現するために、①大気圧グロー放電を用いたプラズマ電気化学反応系における液中反応の評価、②プラズマ電気化学による磁性ナノ粒子生成、③プラズマ電気化学による固体表面の官能基修飾、の3点を具体的な課題に据えた。平成27年度は課題①を中心として、様々な溶液に対し、直流グロー放電でどのようなイオンや中性化学種が液中に生成されるかを体系的に調査することを計画していた。プラズマ電気化学において、気中から輸送される硝酸イオン、亜硝酸イオン、過酸化水素についてはその特性を明らかにした。特に、液体のpHが4以下では亜硝酸イオンが硝酸イオンへと酸化され、これにヒドロペルオキシラジカルが関与することが示唆された。他のイオン種についてはまだ十分に計測できておらず、平成28年度に引き続き行う。一方、当初計画に先行して課題②にも取り組み、鉄電解とプラズマ電気化学を組み合わせた手法を考案し、磁性粒子であるマグネタイトのナノ粒子の高速生成に成功した。これは、鉄電極からFe2+を電解し、この一部を液中反応でFe3+へと酸化し、更に、酸素と結合するものである。ここで鍵となるのは、溶液pHの制御、及び、Fe2+からFe3+への酸化である。前者に関しては、直流グロー放電からの電子照射によってOH-により、液面近傍のpHが10前後に維持されることを示した。また、後者に関しては液中の溶存酸素濃度が極めて重要な役割を果たすことを明らかにした。溶存酸素が直接に酸化反応に寄与するのか、または、水和電子と結合してO2-として寄与するのかは検証中であるが、液中に溶解するガス分子をプラズマ化学反応に利用するという新たな可能性を示した点で大きな成果と捉えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、①大気圧グロー放電を用いたプラズマ電気化学反応系における液中反応の評価、②プラズマ電気化学による磁性ナノ粒子生成、③プラズマ電気化学による固体表面の官能基修飾、を具体的な課題に据えた。平成27年度は課題①を中心として、様々な溶液に対し、直流グロー放電でどのようなイオンや中性化学種が液中に生成されるかを体系的に調査することを計画していた。液中のイオン計測において、使用した機器が安定性を欠き、硝酸イオン、亜硝酸イオンを除いて十分なデータ蓄積が出来ておらず、この点は平成28年度に引き続き実施する。一方で、当初予定よりも先行的に開始した課題②においては、磁性ナノ粒子であるマグネタイト生成について、鉄電解とプラズマ電気化学を組み合わせた手法を考案し、マグネタイトの高速生成を可能にした。また、プラズマ電気化学による液中反応において、溶存酸素が極めて重要な役割を果たすことを見出した。これらは想定した以上の成果である。よって、研究を実施する順番が前後したが、概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、①大気圧グロー放電を用いたプラズマ電気化学反応系における液中反応の評価、②プラズマ電気化学による磁性ナノ粒子生成、③プラズマ電気化学による固体表面の官能基修飾、を通じてプラズマ電気化学の基盤確立、及び、その応用を行う。今後の研究の推進に関し、原則として研究計画に則って実施するが、平成27年度の研究計画の順番を一部入れ替えたので、これに対応して平成28年度の研究計画を変更する。具体的には、課題①に関しては、各種条件において液中に生成されるイオン種、中性化学種、ラジカル種の濃度を計測してデータを蓄積し、液中反応の過程を評価・推定する。イオン種はキャピラリー電気泳動装置、中性化学種は高速液体クロマトグラフを用いて計測する。また、ラジカルはトラップ剤等の試薬を用いる。課題②に関しては、磁性ナノ粒子としてマグネタイトを高速生成し、この時の溶存酸素の効果を明らかにした。溶存酸素の能動制御によるマグネタイト生成の高精度化、溶液としてイオン液体を用いた鉄粒子生成を試みる。また、課題②と③の双方に関連して、液体に薬剤を添加することでナノ粒子や固体材料の表面修飾を行う。
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Research Products
(19 results)