2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H03592
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
木下 博雄 兵庫県立大学, 産学連携・研究推進機構, 特任教授 (50285334)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 哲男 兵庫県立大学, 高度産業科学技術研究所, 助教 (30451636)
村松 康司 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (50343918)
渡邊 健夫 兵庫県立大学, 高度産業科学技術研究所, 教授 (70285336)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 軟X線 / 光学定数 / 多層膜 / 偏光 / 極端紫外線 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は光学定数測定に向けた環境整備に取り組んだ。 軟X線領域において光学定数を測定する最も一般的な手法は、薄膜の反射率の角度依存性を評価し、フィッティングにより光学定数(屈折率と消衰係数)と膜厚を導出する手法である。よって、光学定数を評価するには正確な反射率評価が必要である。正確な反射率測定において重要なことは、高次光除去、偏光制御、散乱成分除去の3つである。平成27年度から、高次光除去のための高次カット機構を開発している。実際にEUV領域(波長13.5 nm付近)での反射率測定において、10%混入していた高次光を0.1%以下に除去できたことが確認できた。本年度は入射光の偏光状態を制御するため、Mo/Si多層膜偏光子2枚を用いた偏光制御機構を開発した。入射角42.5°の多層膜を反射率計上流に配置し、水平偏光成分のみを取り出し、正確なs偏光反射率の測定を可能とした。さらに、偏光子を90°傾けることで、垂直偏光成分のみを取り出し、正確なp偏光反射率の測定も可能とした。このとき昨年度に導入した上流ミラーのあおり角調整機構を利用し、積極的に垂直偏光成分を増やしている。これにより、反射率計へ入射するEUV光の偏光状態を水平偏光と垂直偏光を切り替え可能となり、s偏光とp偏光反射率の測定を同一セットアップで実現できる。 一般的な等周期の多層膜は利用波長範囲が狭いため、絶対値測定誤差をまねく。そこで、ブロードバンド多層膜を開発した。この結果、EUV領域における測定可能な波長領域幅を0.4 nmから2.0 nmと大幅に広げることに成功した。実際に、等周期多層膜偏光子のs偏光反射率とp偏光反射率を測定し、強度比が理論通り1/1000以下であることを確認できた。よって、開発した偏光制御機構によって、p偏光とs偏光反射率を、同一セットアップで別々に高精度に測定できることを実証できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光学定数を評価するには正確な反射率評価が必要である。正確な反射率測定において重要なことは、1)高次光除去、2)偏光制御、3)散乱成分除去の3つである。1)平成27年度から、高次光除去のための高次カット機構を開発している。実際にEUV領域(波長13.5 nm付近)での反射率測定において、10%混入していた高次光を0.1%以下に除去できたことが確認できた。2)入射光の偏光状態を制御するため、Mo/Si多層膜偏光子2枚を用いた偏光制御機構を開発した。入射角42.5°の多層膜を反射率計上流に配置し、水平偏光成分のみを取り出し、正確なs偏光反射率の測定を可能とした。さらに、偏光子を90°傾けることで、垂直偏光成分のみを取り出し、正確なp偏光反射率の測定も可能とした。また、光学定数計算の環境整備を行い、高精度な光学定数測定の環境が整った。
|
Strategy for Future Research Activity |
金属薄膜だけでなく、有機薄膜も含めた光学定数測定を進める。最もユーザーの多いEUV領域の評価では、実際に企業より光学定数測定の相談も受けており、ニーズを踏まえた測定手法の開発を続ける。また、吸収端近傍の光学定数評価を進めたい。吸収端近傍の消衰係数は、通常は吸収分光法により測定されている。しかし、軟X線の光学特性は消衰係数だけでなく、屈折率も重要である。今後、軟X線領域の回折限界リングが実現することで、軟X線の散乱測定や散乱を利用したイメージングが新しい評価手法として定着することが予想される。その基礎データとなる吸収端近傍の光学定数評価を本研究において測定したい。
|