2015 Fiscal Year Annual Research Report
格子振動の非調和効果に関する第一原理的予測精度と計算効率の向上
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15H03601
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩田 潤一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (70400695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 和之 京都産業大学, 理学部, 准教授 (10393810)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / 密度汎関数法 / 並列計算 / フォノン / 連立一次方程式 / 熱電材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
格子振動の非調和効果に対する第一原理計算は、望みの熱伝導特性を有する材料の設計や、電子-格子相互作用の定量評価など、その重要性が近年非常に高まっている。本研究課題は、超並列計算機向け第一原理計算プログラム「RSDFT」に、高次の非線形密度汎関数摂動法による計算機能を実装し、格子振動の非調和効果が関与する現象への適用を目指すものである。 今年度は、基礎となる計算理論とアルゴリズムの構築を中心に研究を行った。非線形といえど、各次数で解くべき方程式は全て一次(線形)の場合と同じ形をしており、再利用性の高い計算コードを用意することで、プログラムの実装を比較的コンパクトにすることが可能である。基本となる線形項(フォノン)に対する方程式は、連立一次方程式であり、数値アルゴリズムとしては共役勾配法系の反復法が有効である。行列-ベクトル積の計算は修正Sternheimer方程式、Poisson方程式を解くことで代替でき、いずれも数理的には連立一次方程式となる。ところで、これまでの研究では、線形項の解法には「Self-Consistent法」と呼ばれる計算手法が採用されており、連立一次方程式としての解法が利用できるという認識があまりないように思われる。したがって、非線形項への応用の前に、線形項に対して本研究で開発したアルゴリズムとその計算効率について明らかにしておくことは有用な情報になると考えられる。28年度前半はこの点に関する研究を進める予定である。 熱電変換材料の設計・探索は、本研究課題で実装するプログラムの重要な応用の一つと考えられる。今年度は、その予備的評価の意味も含め、RSDFTの既存の計算機能を用いて、SiGe合金系のような、非常に大きなユニットセルが必要となるランダム系の電子状態につていの研究も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究協力を予定していた人員全員がそれぞれ別の場所に異動することとなり、また当初PDを雇用する予定であったが、配分額がとてもそれに及ばなかったため、外注を用いた作業に切り替える必要があると判断し、その準備のために多くの時間を要したため。また、開発したアルゴリズムそのものが、当該分野において新奇性の高いものであったため、この点についての研究を発展させる必要も生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
物理的に離れた場所でのプログラムの共同開発およびその利用、また外注による作業の円滑化を念頭におき、まず基本となるRSDFTプログラムおよびドキュメントを整備し、github上での公開(https://github.com/j-iwata/RSDFT)を行った。これは、平成29年度に予定していたソフト公開に向けた作業の一部を先に済ませたことになる。今後、まずは線形項に対する理論とプログラム実装および計算効率等の評価を行い、既存手法との比較を行う。非線形項に対するプログラムの実装は、線形項と形の上では同様の計算を行うものになるはずなので、線形項に対するプログラムを十分整備し、なるべく単純作業となるような形にして、非線形項計算の実装作業は外注に出して進める予定である。
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Research Products
(3 results)