2018 Fiscal Year Annual Research Report
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15H03606
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 秀司 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (50153804)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | モチーフ / モチフィックコホモロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
モチーフ理論とは,モチフィックコホモロジーのコホモロジー論的定義を与えるもので,モチフィックコホモロジーをあるアーベル圏(モチーフの圏と呼ばれる) における高次の拡大群として捉えることを目的とする. 1980 年にDeligne とBeilinson により基本的予想が定式化された.モチフィックコホモロジーは,様々なコホモロジー理論の基礎となる普遍的なコホモロジー理論で,代数的K群とAtiyha-Hirzebruch 型スペクトラル系列により結ばれていると期待される.Voevodsky はモチーフの圏の導来圏にあたる三角圏を構成し,対象を滑らかなスキームに限れば,これが望まれた基本的性質を持つことを証明した
Voevodsky が構成したモチーフの三角圏は,ホモトピー不変性を満たす層(ホモトピー不変層)を基本的構成要素として用いる.しかしこれはVoevodsky の理論に本質的な制約を課す.例えば,代数的K群は特異点をもつスキームにたいしてはホモトピー不変性を一般には持たない.また滑らかなスキームに限ったとしても,代数多様体の構造層や微分形式の層,あるいは代数群が表現する層はホモトピー不変性を満たさない.またガロア表現では暴分岐が重要な研究対象であるが,暴分岐はホモトピー不変性を満たさない.よってVoevodsky のモチーフ理論は応用上いまだ未完成な理論であるともいえる.当該研究では,ホモトピー不変性層を拡張する相互層を新たに導入し,さらにVoevodsky が示したホモトピー不変層にたいする基本定理を相互層にまで拡張することに成功した.Voevodsky の基本定理は,彼のモチーフ理論において基本的な役割を果たすものである.現在は,相互層にたいするこの基本定理を用いて,Voevodsky のモチーフ理論を拡張する相互モチーフ理論を構成することを進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度までの研究で、Voevodskyのモチーフの三角圏の構成において基本的な役割を果たす「ホモトピー不変層」を拡張する「相互層」を新たに導入し,Voevodskyが示したホモトピー不変層にたいする基本的性質のすべてを相互層にまで拡張することに成功した。さらにこれを用いてVoevodskyのモチーフの三角圏の基本的性質である「ホモトピーt-構造の存在」をモヂュラス付きモチーフの三角圏にまで拡張して示すことにいったんは成功したと前年度の実績報告には述べたが証明に間違いが見つかった。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の間違いを修正し、「ホモトピーt-構造の存在」をモヂュラス付きモチーフの三角圏にまで拡張することを完成する。さらにVoevodskyのモチーフの三角圏の基本的性質でモヂュラス付きモチーフの三角圏にまで拡張できていない基本的性質として「Gysin系列」と「双対性」がある。今後の研究ではこれらの性質をモヂュラス付きモチーフの三角圏にまで拡張して示すことを目指す。
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