2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15H03616
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮岡 礼子 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 総長特命教授 (70108182)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 等径超曲面 / ガウス写像 / ラグランジュ交叉 / フレアホモロジー / 正則円板 / ハミルトン交叉性 / 平均曲率流 |
Outline of Annual Research Achievements |
等径超曲面のガウス写像の像は複素2次超曲面のラグランジュ部分多様体になり,極小かつモノトーンとなる.またそのマスロフ数は全て計算されていて,ほとんどの場合,ハミルトン変形によるラグランジュ交叉のフレアホモロジーが定義可能であるが,実際の計算はトーリックの場合などで確立された手法はなく,困難である.我々は,まずHamiltonian non-displaceabilityを示すことを目標に,研究に挑んだ.これはフレアホモロジーの生成元となる交叉が外せないことを意味しており,フレアホモロジー計算の第1歩である.主曲率の重複度が2以上の全ての場合に,このHamiltonian non-displaceabilityを示すことができ,これは論文としてBulletin London Math. Soc.に刊行済みである.他方,ここで証明することのできなかった重複度1の主曲率を持つ場合の研究はこれからで,その難しさは単連結性が失われること,またガウス像が元の等径超曲面で被覆される度数が素数でなくなるところにある.したがって今後この課題に取り組むことを考えている. 他方,元々ラグランジュ交叉のフレアホモロジーはミラー対称性と関連しており,深谷-Oh-太田-小野による深い理論がある.そこでは普遍的な一般論を構築することにより,個別の問題ではなく,理論としての完結を目指している.例えばスピン構造を持つラグランジュ部分多様体のモデュライを考え,そこでポテンシャル関数を定義し,その臨界点を調べることにより,非自明なフレアホモロジーが現れる状況を特定する.こうした一般論に我々の研究がのるかどうかも気になる.そこで,まず等径超曲面のガウス像にスピン構造が入るかどうかを考察した結果,入る場合と入らない場合があることが判明した.これは北京師範大学のZ.Z.Tang教授との共同研究であり,進行中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標はフレアホモロジーを計算することであり,得た結果はその第1歩としての生成元の存在の保証である.我々はガウス像の有限被覆になっている元の等径超曲面にJ-正則曲線などの全てのデータをリフトして,そこでDamianのスペクトル系列を使うという手法でHamiltonian non-displaceabilityを示した. 他方,主曲率の重複度1の場合,この手法は使えない.したがって今後新たな手法を考える必要があり,そのアイディアの一つとして,標数正の係数体を考えるとの示唆を受けた. 深谷-Oh-太田-小野の理論を学び,またEvansらの論文講読も行う必要があり,徐々に始めている.また,実施計画で述べた,重複度1の時に必要となる正則円板の分類を行った植田-野原の論文講読は少々取り組みが遅れている. 関連した平均曲率流の研究はあまり手がついておらず,カップル流などのいくつかの論文を購読するにとどまっているので,この辺りを推進する必要があると考えている. これらの研究は国際共同研究としての研究を進めるつもりであり,互いの訪問や招聘を行ってきた.今後も,当科研費のサポートのもと,研究を今以上に集中して行うことが必要と考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
我々の結論は等径超曲面のガウス像に特化されたものであり,一般論に結びつくものとは言えない.その意味で,深谷-Oh-太田-小野の理論を理解し,より広い見地からの研究を目指すことも考える.H30年度までに目標を個別の結果に留めるか,より広い理論を目指すかの決断を要する.深谷氏は我々への助言として,個別の事象に具体的に取り組むことの重要性を述べている.そこで,我々が熟知している等径超曲面という魅力的な素材に的を絞り,ガウス像の特異ホモロジーを正確に計算し,フレアホモロジーとの関係を考えることは手に届く研究と考える.さらに我々は,被覆を考えることにより,Hamiltonian non-displaceabilityを示したが,ロンドンでの講演で,Evans氏から示唆された,標数正の係数体をとって考えるという別の視点からも,問題に取り組むことを考えている. 深谷-Oh-太田-小野の理論とのつながりにおいては,スピン構造の入らない場合に,独自の結論が得られたことになるので,ラグランジュ部分多様体のモデュライに向きがつけられない場合の結果として,さらなる考察を行う. また残っている重複度1の場合の解決は期間中に行いたいと考えている. 以上取り組むべきことがはっきりしてきたので,中国との国際共同研究としての発展を目指しつつ,今後の成果を挙げる努力を続ける.
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Research Products
(14 results)