2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H03627
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
辻井 正人 九州大学, 数理学研究院, 教授 (20251598)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 豊 九州大学, 数理学研究院, 准教授 (20304727)
新居 俊作 九州大学, 数理学研究院, 准教授 (50282421)
千葉 逸人 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 准教授 (70571793)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 力学系 / 転送作用素 / アノソフ流 / 双曲力学系 / スペクトル / 準古典解析 / 指数混合性 / 相関の減衰 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究の主な成果は次の3点である.1)アノソフ流における指数混合性の問題について大きな進展があった.2)拡大半流の半古典転送作用素の本質的スペクトル半径について,新しい方法によって評価の改良が得られた.3) 接触アノソフ流に対する転送作用素の生成作用素が持つ離散スペクトルの帯状構造について,Faure氏(Fourier 研究所)との共同研究でいくつかの進歩があった.上記は本年度の研究計画で述べた課題のa), b), c)におおよそ対応する. 1)については,具体的には3次元の体積を保つアノソフ流について生成的な条件の下で指数混合性が成立することを示した.アノソフ流において生成的な条件の下で指数混合性が成り立つかどうかは長年問題になってきた.我々の得た結果はこの問題について1つの進歩を示すものである.研究結果については,1月に開催された冬の力学系研究集会で発表し,4月にウィーンで開催される国際的研究プログラムでも3回にわたって内容を講義する予定である. 2) については,結果は古典及び量子力学における開放系の場合のスペクトルについての問題に関するものであり,モデルとして限定的な場合であるが,より良い評価が得られており興味深い.3月にアメリカ(プロビデンス)で開催された研究集会で,同じ方向の研究をしているDyatolov氏(MIT)と議論し今後の研究について話しあった.この研究について,現在の大学院生の李英俊君とも議論して研究を続けている. 3)については,秋にFaure氏を訪問して議論して,論文の執筆の分担やその間の関係について議論するとともに,幾つかの関連する問題について考察を進めた.特に,不曲率多様体上の測地流の場合に,古典力学系のスペクトルと多様体上のラプラス作用素に類似する擬微分作用素のスペクトルとの関係について議論した.議論は今後の研究の中で続けることとした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績で述べた1)は,これまで何度か挑戦してできなかった課題について大きな進歩が得られたもので,当初の計画を上回っている.これを今後どのように発展させるかは本研究の大きな課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度前期は大学(研究科)からサバティカルを取ることを許可されたので,前半は3ヶ月(4月から7月)ほど関連の研究集会とFaure氏との共同研究のためにヨーロッパ(ウィーン,グルノーブル,ピサ)を訪問し,研究交流を進め,研究を発展させたい.より詳しくは 1)Erwin Schrodinger 研究所(ウィーン)において,研究プログラム「Mixing flows and averaging methods」に参加し,講義をするとともに,関連する研究についての講演について議論する.2)Fourier研究所で約1ヶ月の共同研究.さらに,その前にFaure氏の開催する一週間の研究集会「Spectral Geometry, Graphs, Semiclassical Analysis and Dynamics in Peyresq (Peyresq, France)」に参加する.3)ピサで開催される研究集会「Analytical methods in quantum and classical dynamical systems (The Centro di Ricerca Matematica Ennio De Giorgi, Pisa, Italy) 」に参加する.これも関連する分野において非常に重要な研究集会であり,参加して講演する予定である. 一方,研究の発展に対して論文を取りまとめる作業が遅れがちであり,7月に帰国後に夏休みにかけて集中的に取り組む予定としている.
近年エルゴード理論は世界的に見ると研究が盛んになっているが,日本においては有力な若手が育たず,少々残念な状態になっている.その点を改善すべく,エルゴード理論や力学系の研究の研究集会や集中講義を積極的に開催・参加し,関連する研究をサポートするとともに本研究の研究課題との相互に触発される研究交流をしたい.
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