2016 Fiscal Year Annual Research Report
Spectrum of transfer operators for hyperbolic dynamical systems
Project/Area Number |
15H03627
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
辻井 正人 九州大学, 数理学研究院, 教授 (20251598)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 豊 九州大学, 数理学研究院, 准教授 (20304727)
新居 俊作 九州大学, 数理学研究院, 准教授 (50282421)
千葉 逸人 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 准教授 (70571793)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 力学系 / エルゴード理論 / カオス / 双曲力学系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に部分双曲力学系における安定・不安定葉層の幾何学的な構造についての研究を行った.安定・不安定葉層は双曲性を持つ力学系が相空間に定める基本的な幾何学的対象物である.しかし,それらの葉層は,各葉は滑らかであるが,ホロノミー写像は一般には(力学系自体の滑らかさに関係なく)たかだかヘルダー連続であり,解析的,幾何学的な考察はこれまでほとんどされてこなかった.一方で,昨年度の本研究の主な研究成果として得られたアノソフ流の指数混合性に関する結果は,安定・不安定葉層の不可積分性についての幾何学的な定量的評価に基づくものであった.残念ながら,昨年度の結果を得るための議論は,技術的(と思われる)制約のために3次元で体積を保つアノソフ流の場合に限られていた.その点を改良すべく多次元の一般の部分双曲力学系の場合について考察を進めた.ただし,以下に説明するように,部分双曲力学系に対するパリス予想や安定エルゴード予想などの未解決問題についての応用を得るには至っていない.
現在までに得られた成果としては,多次元の一般的な部分双曲的な力学系においても,不安定葉層は各葉の法ベクトル束の有限次元の切断の族を定め,それを不安定葉層のホロノミー写像の微分の代替物と考えることができることがわかったことがある.これは昨年度の成果に至る議論の前半に対応するものである.また,昨年度の議論の後半に当たる力学系の摂動に対する議論も自然に拡張できると考えている.しかし,これらの結果を力学系の位相的,エルゴード論的性質に結びつける際に,中心方向の次元が上がると新たな問題が発生することがわかった.これを解決するためには,これまでの議論のより一般的な展開と新たなアイデアが必要となり,現在のところは出来ていない.これは非常に重要な問題であり,来年度に集中して研究を進めたいと考えている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
部分双曲力学系における安定・不安定葉層の幾何学的な構造とそれに基づく非可積分性の定量的評価について,昨年度の研究成果の自然に拡張する点においては,ほぼ順調に研究が進んでいる.接触アノソフ流や一般のアノソフ流に対するRuelle-Pollocitt共鳴についての海外の研究者(F. Faure 氏)との共同研究についても,2つの論文を準備中で概ね計画通りに進んでいる.これらから,全体としては順調と考えている.
しかし,「研究実績の概要」の部分で説明したように,多次元の部分双曲力学系の考察において,新たな技術的な困難に行き当たり,そのことによって部分双曲力学系についてのPalisi予想や安定エルゴード予想の解決に向けたの研究については,当初の目標としていた成果に結びつけることができていない.しかしこの困難自体は非常に重要な問題と考えるられるので,今後の新たな研究目標として来年度以降により深く研究していきたい.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は,アノソフ流についての Ruelle-Pollicott 共鳴の分布についてのF. Faure氏との共同研究を進めるとともに,多次元の部分双曲力学系の安定・不安定葉層の幾何学的構造についての研究を進めたい.Faure氏との共同研究についてはさらに量子カオスなど物理学への応用を含めて発展を期する.また,今年度は台湾,フランス,カナダなどでの国際的な研究集会に出席予定で,現在までの研究成果を発表するとともに,技術的な面を含めて多くの研究者と議論をして,研究を発展させたいと考えている.とくに,多次元の部分双曲力学系における現在の技術的な困難について集中的に研究を行い,突破口を見つけたいと考えている.
|
Remarks |
個人で作成しているホームページの一部
|
Research Products
(8 results)