2018 Fiscal Year Annual Research Report
完全積分可能系のmoduli構造の解析と関連する幾何学
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15H03628
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
原岡 喜重 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (30208665)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | モノドロミー / KZ方程式 / 接続係数 / 不確定特異性 / 漸近展開 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までは主に確定特異点型の完全積分可能系を対象に研究を進めてきたが,今年度は不確定特異性を持つような完全積分可能系についても研究を開始した。 不確定特異性を持つ多変数完全積分可能系の研究で最も基本となるのは,不確定性を持つ既約特異点因子が交叉するところにおける漸近解析である。常微分方程式の理論からの類推では,まず不確定特異点において微分方程式をより階数の低いものに分解する形式変換を行い(ブロック対角化),その形式変換を漸近展開に持つ解析関数で解を与えるものを扇形領域毎に構成する,という手順が考えられる。多変数の完全積分可能系では,Gerard-Sibuyaの先駆的研究において,ブロック対角化の際の形式変換が常に収束するという意外な主張が得られており,そのため多くの研究者が興味を失ったように思われる。本研究ではこの主張はきわめて強い仮定の下に成り立つことを明らかにして,一般の場合には適用されないことを示した。次に漸近展開の構成においては,真島による強漸近展開の概念(1984年)が最も自然で有用な定義であるとの認識の下に,その具体的計算方法を追求した。 具体例の構成については,確定特異点型のKZ型方程式がKatz理論の応用として得られるので,それからの合流により不確定特異性を発生させることができる。こうして得られる完全積分可能系は,解の積分表示も有するため,積分を用いた漸近解析が可能となり,さらにStokes現象等の大域解析も可能となる。実際の例についてこれらの計算を進めており,多くの知見を獲得しつつある。 国内外の研究集会において研究成果を発表し,多くの専門家と意見交換できた。また研究集会「アクセサリー・パラメーター研究会」を2回開催して,研究交流と若手研究者の育成にも努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
完全積分可能系のなすmoduli空間に様々な操作を定義して,その構造を解明することを目指している。これまで確定特異点型の場合に多くの基本的結果を得ており,それらの自然な延長として,不確定特異点型の場合の研究を開始した。確定特異点型の場合に獲得した知見を不確定特異点型の場合に適用することで,既存の理論で不足していた考察や具体的計算手法の構築を進めており,今後の大きな理論展開の基盤を築き始めている。 セミナーや研究集会の開催,および参加により,関連する多くの研究成果を把握することができた。特に不確定特異性を持つD-加群が様々な重要な場面に現れることがわかり,研究の視野を広げることができた。 予定していた国内研究集会を2回開催でき,また海外での招待講演をはじめ複数の講演を行って研究成果を伝えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
不確定特異性を持つ完全積分可能系の局所・大域解析を進める。個別の方程式に対する研究を通して普遍的のある計算手法の確立を目指すとともに,moduli空間の構造を用いた解析方法についても考察を進める。また共形場理論の視点からも考察を行う。 研究集会・セミナーの主催,研究集会への参加などを通して研究交流を進め,新しい知見の開拓および若手研究者の育成に努めていく。
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Research Products
(6 results)