2016 Fiscal Year Annual Research Report
一般相対論的輻射流体によるブラックホール超臨界降着流と超大質量星の研究
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15H03638
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
梅村 雅之 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (70183754)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 労太 苫小牧工業高等専門学校, 理系総合学科, 准教授 (40513453)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 宇宙物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,一般相対論的輻射流体輸送コードARTISTの開発を行った。このコードは,梅村らが開発した非相対論的な6次元輻射輸送コードARTの計算手法を,一般相対論的な時空計量に適用したものである。この輻射輸送コードは,測地線に沿って光の軌跡を時間依存で解くため,因果律が厳密に満たされ,光線の湾曲,時空の引きずり,重力赤方偏移等の一般相対論効果を正しく扱うことが可能である。また,これまでの近似法のように波面の衝突は起こらず,波として交差することが可能である。ARTISTの計算精度を検証するため,厳密なレイトレーシングコードMASTERを開発し,ARTISTによって計算した結果と比較した結果,非常に良い一致を示し,ARTISTが輻射伝搬を正確に追えていることが確認できた。このコードを用いることによって,超臨界降着流におけるブラックホール近傍での光子捕獲を正確に扱うことができるようになる。この成果は,学術論文として発表した。 超臨界降着流の計算においては,光子捕獲が起こる光学的に厚い領域と光子の脱出が起こる光学的に薄い領域を同時に扱う必要がある。光学的に十分厚い領域では,光子は多重散乱によって拡散する。一方,光学的に薄い領域に入ると,平均自由行程以内で光子は脱出する。これまでのFLD法(フラックス制限拡散近似)では,光学的に薄い部分の輻射輸送は解かず,フラックス制限関数によって近似してきたが,この方法は相対論的には因果律を破るため,因果律を保持する相対論的拡散近似法を開発を進め,固定時空(Kerr時空)の下で一般相対論的輻射輸送計算コードを改良し,光学的に厚い領域と薄い領域とを分けて扱うことができるように改良した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
相対論的拡散近似法の開発を進めた結果,因果律を保持する物理的に正確な取り扱い法を見つけることができた。これは,従来の研究では明らかにされてこなかった方法であり,今後,ガンマー線バーストや活動銀河核ジェットなど広い分野への波及効果が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
因果律を保持する相対論的拡散近似法を,既に開発している共変形式の輻射輸送計算コードを結びつけ,光学的厚さの広いレンジに渡って適用可能な一般相対論的輻射輸送計算コードを完成させる。そして,大局的な一般相対論的輻射輸送計算で得られた局所ローレンツ系でのエディントン・テンソルをテトラド変換により曲率空間(リーマン空間)へ移し,一般相対論的流体方程式と結合することで,一般相対論的輻射流体コードを開発する。
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Research Products
(9 results)