2016 Fiscal Year Annual Research Report
テンソルネットワーク形式による格子ゲージ理論の研究
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15H03651
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藏増 嘉伸 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (30280506)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 格子ゲージ理論 / テンソルネットワーク / テンソル繰り込み群 |
Outline of Annual Research Achievements |
格子QCD計算では, 近年の計算機能力の向上や新規アルゴリズムの開発・改良の結果, 自然界のu,d,sクォーク質量直上でのシミュレーションや, 更には軽原子核の束縛エネルギー計算までもが可能となりつつある. その一方で, 解決すべき長年の課題がそのまま残されていることも事実である. 最も重要な課題は, フェルミオン系を扱う際の負符号問題および複素作用を持つ系のシミュレーションである. これらは, 軽いクォークのダイナミクス, Strong CP問題, 有限密度QCDの研究において避けて通れない問題である. われわれは, 近年物性物理分野で提案されたテンソルネットワーク形式に基づく分配関数の数値計算手法を格子ゲージ理論へ応用し, モンテカルロ法に起因する負符号問題および複素作用問題を解決し, これまでの格子QCD計算が成し得なかった新たな物理研究の開拓を目指す. 本研究の最終目標はテンソル繰り込み群の4次元QCDへの応用である. 本目標に向けて設定された3つのサブ課題は, 1.非可換ゲージ理論への拡張, 2.高次元モデルへの応用, 3.物理量計算のための手法開発, である. 平成28年度は, 連携研究者と協力し, 昨年度から取り組んでいる3つのサブ課題の研究開発を継続した. 特に進展があった研究は, グラスマン数を扱うことのできる高次元(3次元以上)向けアルゴリズムの開発である. 現在, その有効性を確かめるために, 3次元自由Wilsonフェルミオンの分配関数計算を進めており, 並行してグリーン関数計算のための手法開発にも着手した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
サブ課題2.高次元モデルへの応用に関しては, 着実な研究開発の進展が得られている. 平成27年度は4次元イジングモデルの解析を実施し, 平成28年度はグラスマン数を扱うことのできる高次元(3次元以上)向けアルゴリズムの開発を行った. 現在, その有効性を確かめるために, 3次元自由Wilsonフェルミオンの分配関数計算を行っており, 来年度も継続予定である. また, サブ課題3.物理量計算のための手法開発に関しては, フェルミオンを含む物理システムでのグリーン関数計算に取り組んでおり, 開発状況は順調である. サブ課題1.非可換ゲージ理論への拡張に関しては, われわれは今のところ2次元Schwingerモデルの計算に成功している. 即ち, フェルミオンが入った可換U(1)ゲージ理論の定式化および実証計算が完成している. 他方, 純粋なゲージ理論(フェルミオンを含まない)に関しては, カナダのグループによって平成26年に3次元Z2ゲージ理論のテンソルネットワーク形式による定式化が提唱され, 実証計算も行われている. しかしながら, 提案された定式化は4次元拡張や計算精度向上において難点を抱えており, テンソルネットワーク形式の枠内に置ける異なった定式化の必要性が認識されている. この状況を鑑み, 現在3次元Z2ゲージ理論の新たな定式化に取り組んでおり, 来年度も継続予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
3つのサブ課題に置ける今後の研究推進計画は以下の通り. 1.非可換ゲージ理論への拡張:現在取り組んでいる3次元Z2ゲージ理論(可換ゲージ理論)のテンソルネットワーク形式に基づく定式化と実証計算の後, 3次元非可換ゲージ理論への拡張を目指す. 2.高次元モデルへの応用:現在, グラスマン数を扱うことのできる高次元(3次元以上)向けアルゴリズムの開発を行い, その実証計算として3次元自由Wilsonフェルミオンの分配関数計算に取り組んでいる. アルゴリズムの有効性を確かめた後, ゲージ相互作用を持つ3次元のフェルミオン系に取り組みたいと考えている. 3.物理量計算のための手法開発:計算手法開発は, サブ課題2.と並行して進めている. 現在, フェルミオンを含む物理システムでのグリーン関数計算に取り組んでおり, 平成29年度も継続予定である.
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Research Products
(2 results)