2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H03689
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小手川 恒 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (30372684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 仁 神戸大学, 理学研究科, 教授 (60264587)
藤 秀樹 神戸大学, 理学研究科, 教授 (60295467)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超伝導 / 磁性 / 低温物性 / 圧力誘起相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
Cr系超伝導体CrAsの電子状態の解明と新たな超伝導体の探索を行った。まず、これまでのCrAsの結晶は結晶軸方向の異なるドメインを含んでいたという問題点があったが、その原因が高温における直方晶-六方晶の構造相転移であることをつき止め、試料作製時の温度シークエンスを改良することで単一ドメインの結晶成長に成功した。新しい単結晶は圧力下の電気抵抗測定から残留抵抗比が500を超える高純度の結晶であることが分かった。また、CrAsの磁気抵抗が磁場に対して線形の異常な振る舞いを示すことを明らかにした。その線形磁気抵抗はフェルミ面の特殊な形状と強い磁気揺らぎの影響の両者を考慮することで説明できると報告した。また、CrAsは純良な結晶においても量子振動効果が観測されておらず、このことは強い磁気相関を示唆する結果と言える。CrAsの圧力下単結晶NMR測定にも着手し、圧力セルを磁場中で角度回転させることでKnight shiftの精密測定を行った。Knight shiftの結果から、常磁性領域においてスピン磁化率が低温に向けて顕著に増大することが分かった。つまり、超伝導が出現する領域において強磁性的な相関が発達していることを見出した。このことから特異な磁気揺らぎと超伝導の関連が示唆される。新たな超伝導体探索のために複数の物質の作製、圧力効果を調べた。層状反強磁性体Cr2GaNのNサイトをCに置換することで磁気秩序を消失させることに成功した。磁性が抑制される置換量付近で磁気揺らぎの増大は観測されたが、超伝導は観測されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CrAsの単結晶NMRのデータが順調に出ている。単結晶試料が単一ドメインでないという問題点があったが、試料作製方法の改善により、その問題点は克服された。磁気抵抗実験などで共同研究においても順調に成果が出てきている。また、量子振動観測実験も準備が順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
CrAsの単結晶試料を用いたNMR測定を希釈冷凍機温度で行い、圧力誘起超伝導がスピン一重項なのか三重項なのかを明らかにする予定である。また、量子振動観測実験を推し進め、CrAsのフェルミ面の概要を明らかにする。また、新たな超伝導体の探索も並行して進める予定である。
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Research Products
(10 results)