2016 Fiscal Year Annual Research Report
複素空間における「古典力学の基礎問題」と非可積分トンネル効果
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15H03701
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
池田 研介 立命館大学, 理工学部, 教授 (40151287)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
首藤 啓 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (60206258)
高橋 公也 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (70188001)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | tunneling effect / semiclassical theory / nonintegrable sysem / quantum chaos / dynamical theory |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の中心である非可積分トンネル効果が顕在化する転移(インスタントン-非インスタントン転移、INI転移と略)の機構が多量子吸収過程間の競合と遷移による事が明らかにされ成果をまとめつつある。この研究によって、これまでINI転移の解釈として知られてきた共鳴誘起トンネル(RAT)は古典共鳴が可視的な特別な場合で、しかも限られた周波数領域でしか有効ではないが、我々の理論によって全周波数領域に於いて成り立つ普遍的な機構が解明されたといえる。同時に我々の理論で核心占める遷移行列の特異な選択性の機構を解明する作業が実半古典理論、そして我々の独創である複素半古典理論によって開始された。複素半古典論は本質的困難に遭遇したが、実半古典論はかなり成功しその古典真性特異的なINI転移強度特性の漸近的挙動の一部があきらかにされつつある。とはいえ実半古典論も近似的取り扱いしかなされておらず、今後、「時間発展対応原理」の開発によってその改善が期待できる。又複素半古典論の可能性もまだまだ検討する余地がある。この研究で使われた超高精度可積分近似基底によって非可積分トンネルのエネルギー領域定常問題が時間発展問題の極限としてアプローチできる事が判明したので、我々が開発してきた時間領域複素半古典論による非可積分トンネル問題がアプローチ可能になりつつある。 一方、本研究課題のもうひとつのテーマであるカオス系における量子非可逆性の研究に関して、量子非可逆性の「寿命」が計測できるようになった。その方法によると寿命が従来考えられてきたいわゆる「Heisenberg時間」よりはるかに長い事が解明され2編の速報として出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
EU圏のRAT論者との激しい論争もあって成果の出版が遅れている。当然出版されるべき速報が論争の結果レフェリー段階でもめた。論争は我々の側に分があったが、あえて出版を一時的に延期し、結果と意味づけが曖昧なRAT系論文の結果を再解読し我々のアプローチによってより広い視点から意味づけようとしている。その為に本研究課題の中心テーマである半古典論(実半古典論、複素古典論)への展開が遅れ気味だ。
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Strategy for Future Research Activity |
RAT派との論争のおかげで、我々のアプローチの安定性優位性とそれからのRATの物理的意味付けが明らかになってきた。それも含めてこれまでのINI転移に関する総括を目下かなり大部の論文として執筆中である。こちらのかたがつき次第、かねてからの目標である半古典論への展開に集中したい。
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Research Products
(20 results)