2016 Fiscal Year Annual Research Report
フィードバックマイクロレオロジーによる細胞力学の観測
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15H03710
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
水野 大介 九州大学, 理学研究院, 准教授 (30452741)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フィードバック マイクロレオロジー / 細胞力学 / 非平衡揺らぎ / ガウス揺らぎ |
Outline of Annual Research Achievements |
ソフトマターのメソスケールでのゆらぎや力学応答を観測する手段であるマイクロレオロジー(MR)法を用いた研究を推進した。マイクロレオロジー法は、コロイド粒子に外場を加えてその応答を観測するactive MR、外場を加えずに自発的な揺らぎを観測するpassive MRに分けられる。平衡状態ではactive MR とpassive MRが等価な情報を与えるため、passive MR とactive MRの差(揺動散逸定理の破れ)が系の非平衡性の指標となる。我々はこれを流れや揺らぎに対して多重のフィードバックで追随しながら実行するシステムを開発した。当該システムを用いて生きている細胞内部や細胞抽出液のレオロジー計測を行った結果、1)細胞内部は混みあいによりガラス化するはずの濃度にありながら、代謝活性により流動化していること、2)生きている細胞内部環境がアレニウス的に粘性上昇するstrong glass formerであるのに対して、代謝の失われた細胞抽出液は、fragilityの大きなガラス形成挙動を示すことが分かった。 自然はべき的な相互作用で満ち溢れている。観測量の統計分布は、個々の相互作用の分散が有限である時にはガウス分布に、分布の裾野がべき的に広がり発散する場合にはレビ分布に収束する(中心極限定理)。しかしながら、アクティブマターと呼ばれる非平衡系で観測される揺らぎは、そのどちらにも属さない。 我々は、べき的な相互作用の和として得られる極限分布の新しい解析的な表現を見出した。この新しい極限分布は、系の特徴的なサイズと相互作用源の濃度により、ガウスとレビの間を連続的に接続する。我々は、この新しい非ガウス分布の解析的表現が、現実系(遊走微生物懸濁液やアクチン/ミオシンゲル)で観測される非平衡揺らぎを定量的に説明すること実験、理論、および数値シミュレーションを用いて明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画は順調に消化している。また、それに加えて、従来のマイクロレオロジー法で実行される揺らぎの2次のモーメント(パワースペクトルや平均2乗変位)解析を超えて、非平衡揺らぎの分布形状そのものを解析的に議論することが可能となり、複数の学術論文を刊行した。
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Strategy for Future Research Activity |
経過は順調であるために、概ね計画書の通りに推進する。また、当初計画されていなかった揺らぎの分布形状解析についても、本研究に密接な関わりを持つために積極的に推進する。
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Research Products
(27 results)