2016 Fiscal Year Annual Research Report
複合測地データを活用した震源断層即時推定システムの開発
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15H03713
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
太田 雄策 東北大学, 理学研究科, 准教授 (50451513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 浩晃 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (30301930)
大久保 慎人 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 准教授 (50462940)
板場 智史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (90589285)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リアルタイムGNSS / 震源断層即時推定 / 地殻変動連続観測 / ひずみ計 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. キネマティックGNSS時系列高精度解析のための最適対流圏遅延パラメータの長期間安定性 平成27年度に開発したキネマティックGNSS解析の高精度化を目的とした対流圏遅延パラメータ推定時の最適ハイパーパラメータの客観的な決定方法にもとづいて,1観測点において最適ハイパーパラメータが時間的にどの程度安定しているかについての検討を進めた.その結果,天頂湿潤大気遅延量およびその勾配量の最適値が年周変化をすることが確認された. 2. ひずみ計記録を活用した震源断層即時推定手法の開発 平成27年度に引き続き,ひずみ計記録によって震源断層を即時推定するための手法開発およびその手法の過去イベントへの適用によるその精度評価を行った.ひずみ計に含まれる長周期トレンドを効率的に除去するために周波数領域において解析 (Fourier Strain Analysis: FSA)を行い,さらにひずみ観測としては冗長な水平4成分を持つ観測点を用いることで主ひずみ方位,振幅を,観測誤差を含む形で用いた.そしてFSAによって分離した周波数成分を再合成することで,地震の震源時間関数を求めた.適用した地震イベントは2011東北地方太平洋沖地震 (Mw9.0)であり,FSAによって推定されたモーメントマグニチュードはMw9.1となり,ひずみ計データを適切に用いることで超巨大地震規模の即時推定が可能であることを示した. 3. 精密可動台を用いたキネマティックGNSS時系列の精度評価 H27年に改修を実施した精密可動台を用いてゆっくりとした地殻変動場を再現するための実験を開始し,比較的短基線の安定した条件下で開発した精密可動台自体の性能を評価した.その結果,数mm以下の精度で安定してGNSSアンテナを可動できることが確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終的に目標とする,複合測地データを用いてプレート境界で発生する地震の規模とその断層面の広がりをより確度高く把握するための統合解析システムの構築のために,平成28年度も個々の要素技術の高度化を進めた.特にリアルタイムGNSS時系列の精度向上を目指した最適対流圏遅延パラメータの推定に関する技術開発に関しては英文査読付き論文誌でその成果を平成28年度に発表した.これらの結果はほぼ当初予定通りの進捗である.さらに平成28年11月には様々な測地データを活用した地震や津波規模を即時推定するための手法開発とその適用に関する研究集会を開催し,非常に充実した議論を行うことができた.これも当初予定通りの進捗である.このように最終年度に向けて個々の要素技術を統合利用するための素地は整いつつあり,担当研究者間の議論を進めることで,本研究課題の目標を達成できるものと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はこれまでに進めてきたキネマティックGNSS解析の高度化,キネマティックGNSS時系列を定量的に評価するための精密可動台の開発,ひずみ計を用いた震源断層即時推定手法の開発等の個々の成果を取りまとめ,最終的なリアルタイムGNSSおよび地殻変動連続観測をもちいたの統合解析プロトタイプシステムの整備を主として行う.これまでに東北大学と国土地理院ではすでにリアルタイムGNSS解析システム(REGARD)の開発を進めているため,本研究課題では主としてひずみ計データをリアルタイムで解析し,地震規模を即時推定するシステムに注力して開発・整備を進める.プロトタイプシステムではプレート境界型の巨大地震を対象とし,各グリッドポイントにおける地震モーメント解放量を逐次推定できるシステムを構築する.さらに開発されたシステムとリアルタムGNSSによる結果(例えばREGARD)を自動比較することでより確度の高い情報が出せるシステムの構築を行う.また,キネマティックGNSS時系列を定量的に評価するために開発した精密可動台を用いて様々な地殻変動場を再現し,それらをGNSSデータでどの程度正確に推定できるかについて,網羅的な検討を行う.
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