2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H03717
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
島 伸和 神戸大学, 理学研究科, 教授 (30270862)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三ヶ田 均 京都大学, 工学研究科, 教授 (10239197)
松野 哲男 神戸大学, 海洋底探査センター, 特命講師 (80512508)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 内部構造 / 海洋底地球科学 / マントル不均質 / 海底拡大系 / 背弧海盆 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、マントル内部の不均質がマグマ供給量の変化として直接的に反映する海底拡大系を、直下のマントルの不均質性を調べる窓として活用する。具体的には、強い不均質性が見られるマリアナ背弧海盆での拡大軸下の上部マントル比抵抗構造を調べてその比抵抗構造を比較すると同時に、岩石試料の分析も実施してマントル不均質の成因を推定する。 南部マリアナトラフ拡大軸の上部マントル比抵抗構造の解析を進め、拡大軸下の溶融帯に相当すると考えられる低比抵抗帯が拡大軸に対して非対称に存在することが分かった。この非対称性については、観測データを使って比抵抗構造モデルを吟味し、少なくとも海溝側にしか広がりを持てないことが分かった。 音響装置部分等の改造により小型化した海底電位差磁力計を完成させた。また、高精度化と省電力化した磁力計の陸上での試験・改造を実施し、機器の完成度を高めた。これらの機器の海域での試験観測を10月から翌3月までの約5ヶ月間の期間にわたり、海底観測により実施した。これにより、小型化した海底電位差磁力計は良好な観測データが、新規の磁力計は一部不具合があったものの概ね良好なデータの取得ができた。 数値モデリングでは、水輸送およびマグマの発生を考慮した背弧拡大のモデルの作成を継続している。また、拡散場の影響の大きな電磁気探査では、波動理論の適用範囲が狭められているが、電磁気観測データの波動論的解析手法の開発を継続して進めている。 中南部マリアナトラフを対象にした研究航海は実現しなかった。研究航海計画を、国立研究開発法人海洋研究開発機構の研究船利用公募課題として申請を再度行ったが不採択となった。また、韓国の研究観測船を利用した研究航海を模索したが、これも実現しなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初計画していた中南部マリアナトラフの海底における長期電磁場観測および海底岩石試料の採取のための研究航海が実施できなくなった。この航海計画を、国立研究開発法人海洋研究開発機構の研究船利用公募課題として申請を再度行ったが、公募航海日数が大幅に減少している中で移動するだけの日数が多く必要な遠距離の調査海域という悪条件もあり不採択となった。また、韓国の研究観測船を利用した観測機器の設置・回収航海の実現を模索したが、中南部マリアナトラフを対象にした研究航海としては実現しなかった。 一方で、小型化した海底電位差磁力計や新規に開発した磁力計の海域テストを、日本近海であるが海底での観測を10月~翌年3月までの約5ヶ月間で実現した。概ね良好な観測データが得られており、上部マントル比抵抗構造の推定に必要な長期海底観測に使用する観測機器としての性能向上を進めている。 南部マリアナトラフ拡大軸の上部マントル比抵抗構造の解析を詳細に進め、拡大軸下の溶融帯に相当すると考えられる低比抵抗帯が拡大軸に対して非対称に存在することが分かった。この結果は上部マントルの不均質の進化過程に関連すると考えており、数値モデリング等の手法を使って、この要因の検討を始めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、得られている背弧海盆の拡大軸下の上部マントル比抵抗構造と、数値モデリングや岩石試料の分析等の結果を合わせて上部マントルの不均質の実態を検討する。さらに、海底磁力計やデータ解析手法の開発も進め、得られた結果を公表する。具体的には、次の通りである。1)南部マリアナトラフ拡大軸下に拡大軸に対して非対称な低比抵抗帯が存在することを明らかにしたが、この非対称性の要因について検討する。2)水輸送およびマグマの発生を考慮した背弧拡大の数値モデリングを継続し、その結果と上部マントル比抵抗構造の結果を比較することで、現実的に起こっているマントルウェッジ内の不均質と背弧海盆の進化過程について検討する。3)過去に採取されたマントルかんらん岩試料の分析を進める。4)小型化した海底電位差磁力計と高精度化と省電力化のために新規に開発した磁力計を使って海底で試験観測を実施したが、この時に得られた観測データの解析を進め、これらの機器の完成度を高める。5)電磁気観測データの波動論的解析手法の開発をさらに進める。以上のように進めて得られた研究結果を、関連学会での発表や学術雑誌への論文としての投稿により公表する。
|
Research Products
(6 results)