2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study of sea-ice and oceanic variability off the northern Alaskan coast
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15H03721
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
深町 康 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (20250508)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大島 慶一郎 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (30185251)
伊東 素代 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 北極環境変動総合研究センター, 技術研究員 (60373453)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 北極海 / 海氷 / 現場観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
フィールド観測については、8月に研究分担者の大島らがアラスカ北部に出向き、アラスカ大学フェアバンクス校の研究協力者と共同で、2015年に設置した3系の係留系の回収作業を実施した。また、国際協力によって行われているアラスカ北部沖における船舶観測についても、海洋研究開発機構の「みらい」を含む複数の研究船によって実施された。
アラスカ北部の沿岸域に係留されていた超音波氷厚計の生データから海氷厚の導出処理を終えて昨年度までに整備したアラスカ北部沿岸域における2009年から2015年までの6年分の時系列データを用いて、その経年変動についての解析を行った。その結果として、海氷厚の特徴(平均値、頻度分布など)に大きな経年変動が存在することを示し、その要因がこの海域の風速場に支配される海氷の漂流パターンの変動にあることを明らかにした。
これまでにアラスカ北部沿岸域に設置した係留系から得られた海洋の時系列データ(水温・塩分と海流流速)を周辺海域で得られた同様のデータ、人工衛星搭載のマイクロ波放射計データから推定される海氷厚に気象観測データを合わせて計算される海氷生産量データ、現実的で高解像度の海氷・海洋結合モデルの結果と合わせて解析した。その結果として、この海域における海水特性の変質過程に大きな経年変動が存在し、その要因がこの海域において岸沿いに吹く北東風の変動にあることを明らかにした。この北東風は北極海中層に広く分布する大西洋を起源とする海水の湧昇をもたらすため、太平洋側北極海でありながら、アラスカ北部沿岸域における海水特性の変質には大西洋水の影響が顕著であることも示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フィールド観測については、係留系の回収を無事に行うことに成功し、良好なデータを取得するとともに、「みらい」その他の船舶観測も予定通りに実施することができた。 平成28年度末に国際学術誌 (Journal of Glaciology) に投稿していた係留系による海氷厚の観測結果を取りまとめた論文についてはその後の改訂作業を経て8月に受理された。また、係留観測によって明らかとなった海氷厚の経年変動についても国際学会での発表を行った。 平成28年度から取り組んでいた係留観測結果に基づくアラスカ北部沿岸域での水塊変質過程の研究については、その成果を取りまとめて国際学術誌 (Journal of Geophysical Research) に7月に投稿し、現在改訂作業中である。 当初は本研究計画に含まれていなかったアラスカ北部沖合いのカナダ海盆域での海氷厚の係留観測データについては、当初計画にある沿岸域のデータとの比較のために、研究分担者の伊東が取得したデータを中心に解析を行い、夏季には海氷が消滅する一年氷域と夏季にも海氷が残る多年氷域における海氷の熱力学的な成長についての新たな知見が得られ、国内外の学会で発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
アラスカ北部沖の船舶観測については、昨年度と同様に複数の研究船で実施される予定で、カナダの砕氷船ローリエ号には研究分担者の伊東が乗船して観測を実施する。
これまでに取得した係留観測による海氷厚データについては、海岸や海底に固着している定着氷が多く見られる沿岸付近とより沖合いの海域における海氷厚の特徴の違いに特に注目して解析を行う。
成果の取りまとめについては、現在Journal of Geophysical Researchに改訂版を投稿している論文を受理に向けて仕上げると共に、カナダ海盆域での海氷厚の季節変動についての結果などをまとめて国際学術誌に投稿する。
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Research Products
(12 results)