2015 Fiscal Year Annual Research Report
マントル組成変化と大陸衝突事変に基づく地殻・マントル物質循環の精密解析
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15H03748
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
大和田 正明 山口大学, 理工学研究科, 教授 (50213905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川嵜 智佑 愛媛大学, 理学部, 研究員 (50136363)
外田 智千 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (60370095)
亀井 淳志 島根大学, 総合理工学研究科, 准教授 (60379691)
志村 俊昭 山口大学, 理工学研究科, 教授 (70242451)
小山内 康人 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (80183771)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マントル交代作用 / 大陸衝突帯 / ゴンドワナ大陸 / 地殻マントル相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
大陸衝突帯では,一方の大陸地殻がマントル中へ潜り込み,地殻とマントルが反応しマントル組成を改変させる.本研究は,ゴンドワナ大陸形成時の衝突帯である東南極セール・ロンダーネ山地を例に,衝突の時期を求め,苦鉄質火成岩の化学的特徴から衝突前後のマントル組成の変化を明らかにすることを目的とした.一方で,地殻物質とマントルが反応する条件は,プレートの収束速度や潜り込む大陸地殻物質の組成等によって変化する.そこで,他の衝突帯に産する火成岩類のマグマ生成条件を比較して,大陸衝突帯における地殻・マントル間の物質循環の多様性と原因を解明することも合わせて検討する. 上記の計画に基づき,平成27年度は東南極セール・ロンダーネ山地に分布する火成岩類のうち,特に閃長岩とランプロファイアーに着目した.これらはマントル起源のマグマの可能性が高い.そしてKに富むことでも特徴付けられる.先行研究では,これら火成岩体のK-Ar年代,Ar-Ar年代として500~450Maが報告されていた.第50次南極観測隊での調査に加え,第28,32次隊で得られた試料を検討した結果,ランプロファイアーにはMg#が70に達するものがあり,マントル起源であることが確かめられた.また,ランプロファイアーと閃長岩は化学組成の特徴に類似性が認められた.さらに,これらの岩石試料からジルコンを分離し,U-Pb年代をSHRIMPによって測定した結果,560~550Maの年代値が得られた.この年代値はゴンドワナ大陸衝突帯の形成年代(650~600Ma)後に当たる.こうしたデータを考慮すると,閃長岩とランプロファイアーは同一のマグマに由来し,それらは大陸衝突後のマントルが部分溶融することで形成されたことが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
岩石試料の薄片観察と大陸衝突年代を明らかにし,同位体比を含む岩石化学組成の分析を実施した.その結果,大陸衝突によるマントルの組成改変を検討できる試料が特定でき,平成27年度の当初計画を遂行できた.また,他の衝突帯(ベトナム)や沈み込み帯(西南日本)に産する火成岩類のマグマ生成条件と比較するため,これらの試料の解析を始めた.特に沈み込み帯における火成作用について新たな知見を得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(平成28年度)以降は,今年度明らかになったマントル組成の改変を見積もるため,マグマの形成深度と大陸地殻物質の関与の程度を定量的に検討する.また,他地域の大陸衝突帯や沈み込み帯における火成作用との比較を通じて,ゴンドワナ大陸衝突帯における火成活動の特徴を明確にすることも課題となる.
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Research Products
(12 results)