2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15H03765
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松下 道雄 東京工業大学, 理学院, 准教授 (80260032)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 佳宏 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (50372462)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 一分子観察(SMD) |
Outline of Annual Research Achievements |
古典コンピューターにおける論理演算の考え方を根底からくつがえす量子論理演算は、すでに少数の量子ビットであれば実現している。しかし、現実的な桁数の演算にはほど遠い。そこで、研究代表者らは、結晶中にある無数のイオン一つ一つをそれぞれ1量子ビットずつに割り当てることで、量子ビットを高度に集積することを目指し、新しい系の探索と観察する光学顕微鏡の独自開発を10年にわたり続けてきた。その結果、昨年春、ついにLaF3結晶中にドープされたPr3+を1イオンごとに光検出することに成功した。当該研究では、この成果を発展させ、①複数のイオンの核スピン状態を個別に光操作することで量子演算を実現する。②量子演算に用いるPr3+同士の三次元相対位置を数nmの精度で決定する方法論を確立し、Pr3+同士の相互作用を精密に分光測定することで、集積化されたPr3+で実現可能な量子論理演算を評価する。 Pr3+の発光は微弱である。個々のイオンからの微弱な発光を用いて高精度な分光測定を実現するには、その発光をいかに効率良く測定するかが鍵になる。そこで平成28年度には、課題Cとして「超解像蛍光顕微鏡の開発による単一Pr3+の三次元空間イメージング」、課題Dとして「半球型LaF3結晶を用いることによる三次元分解能および発光検出効率の向上」をおこなった。二つの課題についてはおおむね順調に進んでおり、大きな計画の遅れはない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、課題Cでは、試料ホルダーの検討による静的な機械安定化をはかると共に、液体ヘリウム内の温度やステージの位置をアクティブに制御することで、標準偏差0.05 nmという世界最高のイメージ安定性を持ったクライオ蛍光顕微鏡の開発に成功した。蛍光色素をモデルとした予備実験により、この顕微鏡を用いれば、色素1分子の位置を焦平面方向で3Åというきわめて高い精度で決定できることをしめした。この成果はすでに投稿済みである。さらに、高い光学性能を得るために昨年度に引き続き課題Dの半球レンズを用いた研究をすすめていた。二つの課題については大きな計画の遅れはない。
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Strategy for Future Research Activity |
いよいよ来年度からは「固体中にある複数のイオンの核スピン状態を個別に光操作することで量子演算」を実現する。そのための装置的な準備は計画通り進んでいる。これをさらに延ばしていき、世界で初めての当該課題に挑戦する。
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Research Products
(3 results)