2017 Fiscal Year Annual Research Report
Optical Detection of spin states of individual ions
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15H03765
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松下 道雄 東京工業大学, 理学院, 准教授 (80260032)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 佳宏 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (50372462)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 一分子観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
希土類イオンであるプラセオジウムイオンを用いた量子実験を実現するために、今年度も顕微鏡の開発をおこなってきた。我々は、2014年に、1個のプラセオジウムイオンの核スピン状態を光で検出・操作することに成功している。しかし、プラセオジウムからの発光量は長い励起状態の寿命により制限されており、信号ノイズ比が十分では無かった。しかし、励起状態の寿命が短ければ、スペクトル幅の増大によって、核スピン状態に由来するハイパーファイン構造が隠れてしまうために、寿命が短い系を選ぶのも得策ではない。そこで、このような実験結果を元に、現実的な量子実験を行うためには、検出効率の向上とイオン同士の相対位置が不可欠であると考えている。このため、特に、今年度はこの部分に取り組み、非常に良い成果をあげることができた。 検出効率の向上に関しては、当初の計画どおりに研究が進んでいる。一般に、顕微測定では、フラットな界面が存在する。このため、結晶内部にある対象を見ようとすると、検出効率が著しく低下することが分かっている。今年度、我々が開発したクライオ蛍光顕微鏡に合わせた光学シミュレーションを行い、検出効率の低下を定量的に評価した。また、その対策について研究を行い、特殊なレンズの設計までおこなった。 相対位置の正確な決定に関して、極めて重要な知見が今年度得られた。単一の双極子からの発光は空間的に等方的ではない。このため、この非等方的な輻射が位置決定に±50 nm程度の系統誤差を与えることと、三次元のイメージングをおこなうことでこれを補正できることを実験的にしめした。これは、学術的にきわめて価値の高い研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示した「オングストローム精度の光イメージングを妨害する系統誤差の研究」という当初の研究計画には無かったが、学術的にも応用的にも重要な研究が実行できた。これは、高精度な光イメージングには、一般的に通用する内容であり、きわめて学術的価値の高い研究が実行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
光研究効率と位置決定精度の向上という顕微鏡側の技術は準備がそろった。今後は、この技術を活かして、プラセオジウムの量子実験に挑戦していく予定である。すでに、光源やその安定化のための共振器などは準備がある。この光源を顕微鏡に導入することで実験が可能になると考えている。
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Research Products
(6 results)