2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H03771
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
立川 貴士 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20432437)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / 単一粒子分光 / 太陽電池 / 有機鉛ハロゲン化物ペロブスカイト / 電子移動 / フォトルミネッセンス / 蛍光顕微鏡 / 光化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、シリコン系太陽電池に代わる新たな光電変換材料として、有機鉛ハロゲン化物ペロブスカイトCH3NH3PbX3(X=Cl, Br, I)が注目を集めている。一方、これまで様々なデバイスの作製方法が報告されているが、界面におけるトラップ準位が電荷移動に及ぼす影響は解明されていない。そこで、本研究では、上記ペロブスカイトのナノ粒子を新規に合成し、蛍光顕微鏡を用いた単一粒子発光観察を行った。PbBr2とCH3NH3BrのDMF溶液をジエチルエーテルに滴下することで、CH3NH3PbBr3ナノ粒子を得た。TEM画像の解析により、平均サイズが約10 nmのペロブスカイト構造を持つナノ粒子が確認された。次に、自作の蛍光顕微鏡システムを用いて、CH3NH3PbBr3ナノ粒子の単一粒子発光観測を行った。特に、透過型電子顕微鏡像との対応から、サイズ減少による発光ピークの短波長シフトが確認されたことから、有機無機ペロブスカイト材料でも量子閉じ込め効果が発現することが直接的に示された。また、電荷捕捉に由来すると考えられる発光の明滅(ブリンキング)現象が観察された。主な電荷捕捉サイトとして、Br欠陥によって生じた不飽和のPb原子が考えられる。そこで、ルイス塩基であるピリジンをナノ粒子表面のPbサイトに吸着させることで電子捕捉過程の抑制効果を検証した。その結果、ピリジン添加により、発光強度が著しく増加することがわかった。増加の度合いは粒子によって大きく異なり、添加前の強度と比べ2~100倍であった。発光強度の増加とともに、ブリンキングの頻度も減少したことから、Pbサイトへの断続的な電子捕捉がブリンキングの起源であると結論付けた。また、長時間の光照射によっても発光強度が著しく増加することがわかった。発光強度の時間変化の解析から、1粒子あたり数個程度の欠陥サイトが存在していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
有機鉛ハロゲン化物ペロブスカイトナノ粒子の合成法を確立し、単一粒子発光観察に成功した。特に、同一粒子に対する蛍光顕微鏡像および透過型電子顕微鏡像観察から、発光ピークの粒子サイズ依存性を明らかにしたことは特筆すべき点である。また、平成28年度に計画していた発光ブリンキング現象の機構解明についても、表面欠陥の関与を実験的に証明し、さらに、欠陥数を定量的に見積もることにも成功した。これは、将来的に単一欠陥レベルの反応解析が可能であることを示している。以上の理由から、本研究は当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ヨウ化物の有機鉛ハロゲン化物ペロブスカイトや複数のハロゲン化物からなるペロブスカイト材料の合成と単一粒子発光観測に展開する。特に、ハロゲン化物イオンの置換反応に着目し、その場観察を可能とする実験系の構築を進める。さらに、ブリンキングなど、単一粒子に特徴的な発光挙動の観測から、湿度などの周囲環境がペロブスカイトの構造や反応過程に及ぼす影響を明らかにする。
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Research Products
(13 results)