2015 Fiscal Year Annual Research Report
半導体ナノ微粒子複合系のホットキャリア・マルチキャリア移動と荷電励起子の研究
Project/Area Number |
15H03773
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
玉井 尚登 関西学院大学, 理工学部, 教授 (60163664)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 半導体ナノ微粒子 / 荷電励起子 / ホットキャリア / マルチキャリア / 過渡吸収分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,以下の項目を中心に研究展開した。 1.半導体ナノ微粒子複合体のホットキャリア移動の解析 ホットキャリア移動とその反応メカニズム,量子閉じ込めの次元性との関係を解明するために, 3次元量子閉じ込めのCdSe量子ドット(QDs),および1次元量子閉じ込めのCdSe ナノプレートレット(NPLs)を合成し,これらに貴金属ナノ微粒子,特にAuやPt等のナノ微粒子(NPs)を接合する手法を種々検討した。高分解能電子顕微鏡(HRTEM)で構造解析した結果,CdSe NPLsには直径2 nm程度までの小さなAuおよびPt NPsなら接合可能である事が分かった。更に,Au, Pt NPsを接合したCdSe NPLsの状態選択励起による過渡吸収分光の結果,1次元量子閉じ込めのNPLsでは,(a)連続的なエネルギー準位による効率的なフォノン放出の為に高励起状態からの緩和が非常に早い事,(b)これによりホットキャリア(電子)移動がほぼ起こっていない事,(c)バンド端からの数100 fsの電子移動以外に,パルス幅(~ 60 fs)よりも早い超高速電子移動が存在している事,が明らかになった。 2.半導体ナノ微粒子系の荷電励起子 電子のドーピング剤としてNaBH4やLi[Et3BH]を用い,種々のCdSe QDsおよびCdSe NPLsに光化学電子ドーピングを行った。その結果,ドープ量の少ない状態ではQDs発光量子収率が増大したが,ドープ量が増加すると減少し,早い発光減衰が観測された。これは,ドープ量に依存して最初はQDsの表面欠陥が電子ドーピングによって埋まり発光量子収率が増大するが,更に加えると1S状態でトリオンが生成してその緩和が早くなるものと解釈した。また,CdSe NPLsでは,電子顕微鏡観察により電子ドープしても形状変化は全くないが,吸収および発光スペクトルが大きく変化するという興味深い現象を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CdSe NPLsにAuおよびPt NPsを接合する条件を見出すと共に,それらに対してフェムト秒状態選択励起の過渡吸収分光を適用し,キャリア移動を解析した。その結果,1次元量子閉じ込め系ではホットキャリア移動が起こらない事を実験的に初めて明らかにした。 さらに,光化学電子ドーピングでは,ドープ量に依存した発光量子収率の増大やトリオン形成を見出しており,順調に研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き,以下の項目を中心に研究展開する。 1.これまでの研究では,2 nm 以下のサイズの小さな貴金属ナノ微粒子しか接合できなかったが,より大きなサイズのプラズモン増強電場を持つAuやPtなどの貴金属ナノ微粒子を接合する方法論,および貴金属ナノ微粒子の接合数を制御する方法論を開拓し,新規なハイブリッド系の構築を目指す。 2.これらのハイブリッド系の構造を高分解能電子顕微鏡(HRTEM)で解析する。さらに,半導体ナノ微粒子から貴金属ナノ微粒子へのキャリア移動ダイナミクスに関し,特にホットキャリア移動およびマルチキャリア移動反応をフェムト秒過渡吸収分光の状態選択励起とその励起光強度依存性により解析する。これにより,電子状態やサイズ,形状,量子閉じ込めの次元性とホットキャリア,マルチキャリア移動速度の関係を明らかにする。 3.これまでCdSe QDsを中心に電子ドーピングの実験を行い,初期段階で発光増強が観測されたので,その詳細なメカニズム解明を行う。発光増強が表面欠陥サイトの電子占有によるものかどうか,種々のサイズの欠陥を有するCdSe QDsを用いて,ドーピングによる発光増強のサイズ依存性および荷電励起子の発光寿命のサイズ依存性を解析する。Li[Et3BH]を用いた電子のドーピングだけで無く,ホールドーピング剤としてTCNQ等も用いる。またCdSe NPLsのドーピングに関しても予備的な実験を行ってきたが,吸収・発光スペクトル変化とHRTEM観察による構造との相関,および励起子ダイナミクスを時間分解レーザー分光により詳細に解析する。さらにトリオン等の荷電励起子は低温でより安定に存在すると考えられるので,低温における解析も行い,荷電励起子の光特性や結合エネルギーのサイズ依存性,量子閉じ込めの次元性との相関を明らかにする。
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Research Products
(20 results)