2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H03802
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大熊 毅 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50201968)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 触媒的不斉合成 / 不斉水素化反応 / 不斉異性化反応 / 不斉シアノ化反応 / 部分水素化反応 / ルテニウム錯体 / エナンチオ選択性 / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はケトン類やイミン類の不斉水素化反応および不斉シアノ化反応、アリルアルコール類の光学活性アルデヒドへの不斉異性化反応、アルキン類の(Z)-アルケンへの部分水素化反応において、世界最高水準の効率と立体選択性、特異な官能基選択性を示す触媒の開拓を目的とする。以下に本年度の研究成果を示す。 1.不斉水素化: 1) ケトエステル類を不斉水素化し、光学活性ヒドロキシエステル(含ラクトン)とジオールを作り分ける触媒および反応条件の探索を行った。γ-ケトエステルを触媒:塩基 = 1:3.5、水素8気圧、室温の条件でヒドロキシエステル(含ラクトン)を、塩基(40 mM)、水素20気圧、40 ℃の条件でジオールを>99%の選択性で作り分ける触媒の開拓に成功した。2) N-ベンジルイミンの不斉水素化に関し、溶媒をトルエン、塩基をナトリウムアルコキシドにすることでE/Z異性化およびアルジミンへの異性化を効果的に抑制できることを明らかにした。 2.不斉異性化: 光学活性ジホスフィンTolBINAPとN,N-ジブチル-1,2-ジアミンを配位子とするRu錯体触媒を用い、アリルアルコールの光学活性アルデヒドへの異性化検討において、世界最高の触媒回転数(TON) >1000を達成した。 3.不斉シアノ化: 1) 光学活性ジホスフィンBINAPとフェニルグリシンを配位子とするRu錯体とC6H5OLiからなる複合金属触媒を用いることで、アルキニルケトンのシアノ化でTON = 2000、光学収率97%を、2) XylBINAPとバリンを配位子とする触媒を用い、アルキニルイミノエステルの反応でTON = 500、光学収率96%を達成した。 4.部分水素化: DMF中Pd(OAc)2と1,4-ブチンジオールを混合するだけでPdナノ粒子を調製できることを見いだした。半年以上の保存後も均一性を保つことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
独自に開拓したRu/ジアミン型触媒、Ru/PICA型触媒およびRu-Li複合金属触媒を用い、不斉水素化反応、不斉異性化反応、不斉シアノ化反応において、従来の触媒では為し得なかった高効率、高エナンチオ選択性、官能基選択性を達成した。いずれの反応においても当初の計画以上の成果が得られている。また、新規均一系Pdナノ粒子も想定以上の物性を示した。 不斉水素化: Ru/PICA型触媒によるγ-ケトエステルの不斉水素化において、反応条件を変えるだけで、当初の計画(>98%)を上回る>99%の選択性で対応するヒドロキシエステル(含ラクトン)とジオールを作り分けることに成功した。これまでに例のない世界最高水準の官能基選択性である。N-ベンジルイミンのE/Z異性化およびアルジミンへの異性化を、溶媒と塩基の種類を変えるだけで抑制できたことも想定以上の成果である。 不斉異性化: Ru/ジアミン型触媒を用いることで、代表基質に選んだアリルアルコールの光学活性アルデヒドへの異性化検討において、計画の2倍以上の触媒回転数(TON) >1000を達成した。世界で最も活性の高い触媒の開拓に成功した。 不斉シアノ化: Ru-Li複合金属触媒を最適化し、アルキニルケトンのシアノ化でTON = 2000、光学収率97%を、アルキニルイミノエステルの反応でTON = 500、光学収率96%を達成した。計画では、TON = 500、光学収率>95%が目標であり、いずれもそれを上回る成果となった。アルキニルケトンのシアノ化で最も優れたデータであり、アルキニルイミノエステルの初めての不斉シアノ化例である。 部分水素化: DMF中Pd(OAc)2と1,4-ブチンジオールを混合するだけの簡単な操作で均一系Pdナノ粒子の調製に成功し、目処とした半年を超えて均一性を保持する物性が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は極めて順調に進行しており、期待以上の成果が得られている。計画変更の必要性は認められない。以下に具体的な方策を示す。 不斉水素化: 1) 27年度に見いだしたγ-ケトエステルを不斉水素化し、ヒドロキシエステル(含ラクトン)とジオールに作り分けるRu/PICA型触媒の構造を最適化し、触媒回転数(TON) = 500、鏡像体過剰率(ee) >95%の達成を目指す。2) N-ベンジルイミンの不斉水素化に関し、27年度に見いだした塩基と溶媒の組合せを用い、Ru/ジアミン型触媒によるアセトフェノン N-ベンジルイミンの不斉水素化において、TON = 1000、>95% eeの達成を目指す。 不斉異性化: 代表基質に選んだアリルアルコールの異性化で高い活性を示したRu/ジアミン型触媒の構造最適化を行い、光学活性アルデヒド生成物を>95% eeで得ることを目標とする。また、この触媒を用いた基質一般性の検討を行う。 不斉シアノ化: 1) 最適化したRu-Li複合金属触媒を用い、アルキニル末端に水素、アルキル基、アリール基等が、カルボニル部にアルキル基が置換した比較的単純な構造をもつアルキニルケトン類の不斉シアノ化でTON = 500、>95% eeの達成を目指す。2) 代表基質に選定したアルキニルイミノエステルの不斉シアノ化において最適化したRu-Li複合金属触媒を用い、基質一般性の検討を行う。アルキニル末端の置換基効果を検証する。 部分水素化: 27年度に見いだした1,4-ブチンジオール由来の化合物を保護剤とする均一系Pdナノ粒子を触媒とするアルキン類の部分水素化を検討する。内部アルキンのジフェニルアセチレンから(Z)-アルケンを、末端アルキンのフェニルアセチレンから末端アルケンを得る反応でTON = 10,000、>98%の選択性の達成を目指す。
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Research Products
(16 results)