2015 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属触媒を活用する酸化還元調和型炭素骨格構築法の開発
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15H03809
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
倉橋 拓也 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50432365)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 遷移金属触媒 / 酸化還元調和型 / アリルアルコール / 不斉合成 / 不斉配位子 / 反応機構解析 / 量子化学計算 / X線吸収分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、アルコールとアルキンが低原子価ニッケルとカルベン配位子を触媒として用いることで、穏和な反応条件(室温)で炭素-炭素結合が新たに形成する反応が進行して、アリルアルコールが得られることを確認し、本研究の基盤となる結果を得た。具体的には、ニッケル(0)およびNHCカルベン配位子5mol%存在下、アルコールとアルキンをトルエン中室温で反応させることにより、目的とするアリルアルコールが高い収率で得られることがわかった。不斉配位子として、25種類の不斉NHC配位子の合成を行い、これらを用いた不斉触媒反応を検討した。詳細な解析の結果、触媒の反応効率と光学純度を両立させるためには、反応系中において、反応中間体である5員環ニッケラサイクルの速やかな生成が必要であることがわかった。また、本触媒反応において、5員環ニッケラサイクルとアルコールの反応により、最終生成物であるアリルアルコールとアルデヒドが生じるが、この反応段階が触媒反応における律速段階である可能性を示唆する結果をえた。以上のことから、今後は実用性・汎用性の高い方法論として確立するためには、より高活性な触媒系の開発に基づく反応効率の向上や、立体・位置および官能基選択性に関する詳細な検討が必要であることがわかった。具体的には、カルベン配位子の設計・合成による高活性ニッケル触媒系の探索を行う必要があるとの結論を得た。さらに、反応で生じる5員環ニッケラサイクル中間体の構造および反応性に関しても考察が必要であるとの知見をえた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の申請書に記載した計画で進捗している。これまでに複数の不斉配位子の合成に成功しており、これらを用いた不斉触媒反応の検討を実施している。具体的には、NHC型配位子において、窒素上の置換基としてAr基が置換したものが、触媒活性が高いことを見出した。一方で、アルキル基が置換したものでは、収率が低く、触媒活性が低いことを確認した。反応における不斉アリルアルコールの光学純度に関しては、アルキル基が置換したものが、Ar基が置換したものよりも高いことがわかった。これらのことから、窒素上の置換基の最適化により、高い触媒活性と光学純度を両立させることが可能であることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の申請書に記載した計画に基づき研究を進める。すわなち、不斉配位子の設計に基づく酸化還元調和型不斉カップリング反応の開発を実施する。また、反応中間体の溶液構造をSPring-8でのXAFS測定により明らかにして、最適な不斉配位子の設計における指針を得る。
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