2015 Fiscal Year Annual Research Report
エステルの脱炭酸・脱カルボニル化触媒系の探索と精密有機合成への応用
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15H03811
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鳶巣 守 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60403143)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機合成 / 触媒反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、エステルなどの単純なカルボニル化合物の脱炭酸や脱カルボニル化を促進する汎用性の高い触媒を開発することである。そのためには、不活性な炭素-炭素結合や炭素-酸素結合を切断するための触媒開発が必要となる。本年度は、ニッケル、及びロジウム触媒を用いたこれらの結合切断反応を実施し、以下の結果を得た。 1.ニッケル触媒反応 ①ニッケル錯体とN-ヘテロサイクリックカルベン(NHC)配位子を用いることで、ベンゾフェノンのような単純ケトンの脱カルボニル化が進行し、ビアリールが得られることを明らかにした。この反応には、二回の炭素-炭素結合切断が含まれる。これまで、この種の反応には、高価なロジウム錯体を用いる必要があり、本反応はニッケル錯体の新しい反応性を明らかにしたものである。 ②ニッケル触媒によりカルバメートの脱炭酸反応により、アニリン誘導体が得られることがわかった。この反応には強固な炭素-酸素、炭素-窒素の2つの結合開裂が含まれる。一般にアミノ化反応は、塩基を添加した条件で行われるが、この手法を用いれば塩基フリーの条件で芳香環にアミノ基を導入できるという点で優れている。 2.ロジウム触媒反応 今回ターゲットとする脱炭酸反応は不活性な炭素-酸素結合の切断を必要とするが、それにはニッケル錯体の使用がこれまで必須であった。今回の検討で、ロジウム触媒でもカルバメートやピバレートのC-O結合が切断できることを明らかにした。ロジウム触媒は多くの結合形成反応が知られているため、ニッケルではできないような脱炭酸後の結合形成の多様化が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニッケル触媒においては、脱炭酸型と脱カルボニル型の反応を計画していたが、そのプロトタイプとなる反応が進行することを両方の反応で確認することができた。ロジウムに関しては、未知へのチャレンジであったが、これに関しても脱炭酸反応に必要なC-O結合切断という素反応が起こることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
プロトタイプとなる反応が進行することは確認できたので、今後は、触媒のチューニングによる活性向上と、基質展開による一般性の確認を進めていく。 反応形式の多様性についても、取り込まれる求核剤に相当する部分の構造を拡大していく。
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