2016 Fiscal Year Annual Research Report
Developmen of Catalytic Decarboxylation and Decarbonylation Reactions of Esters
Project/Area Number |
15H03811
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鳶巣 守 大阪大学, 工学研究科, 教授 (60403143)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ニッケル錯体 / 脱カルボニル化 / ケトン |
Outline of Annual Research Achievements |
ケトンの脱カルボニル化反応は2つの炭素-炭素結合の切断を必要とするため、困難な反応である。環ひずみや配向基を持たない単純なケトンの脱カルボニル化は特に困難であり、これまでに報告例があるのは、化学量論量のロジウム錯体を用いる例があるのみであった。本研究でわれわれはニッケル錯体を用いることで、ベンゾフェノンのような単純なケトンの脱カルボニル化反応が進行することを明らかにした。錯体としては、0価のシクロオクダジエンニッケルとN-ヘテロ環カルベン配位子の組み合わせがよく、特にイミダゾール環の4,5位にメチル基を導入したカルベン配位子を用いることで反応活性が向上することが分かった。本ニッケル錯体を用いる手法は、様々な芳香族ケトンの脱カルボニル化に適用可能である。一方で、脂肪族ケトンに対しては大きく収率が低下することが今後の課題である。ベンゾフェノン誘導体の反応に関しては、2つのベンゼン環に対して、1)2つとも電子求引基を導入した基質、2)2つとも電子供与基を導入した基質、3)1つの電子求引基と1つの電子供与基を持つ基質、の3つの基質の反応速度を比較したところ、3)の基質が最も反応速度が大きいということがわかった。このことは、反応機構において、電子求引基により加速される段階と、電子供与基により加速される段階の両方が含まれていることを示唆している。さらに、反応終了後にはニッケルカルボニル錯体が生成していることがわかっており、この一酸化炭素を脱離させることができれば、反応を触媒化できると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
カルボン酸誘導体を原料とした脱炭酸、脱カルボニル化を想定していたが、今回ケトンの脱カルルボニル化を見出した。これは、当初想定していたよりも炭素-酸素結合の切断をともなうため、より困難な反応である。反応機構上も未知の過程を含んでおり、新しい展開が期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
今回見出したニッケル錯体を用いる系を、エステル、アミドなどの脱カルボニル化、脱炭酸反応へと展開を進める。
|