2015 Fiscal Year Annual Research Report
大面積で一義的に配向したキラルな共有結合フレームワークの機能開拓
Project/Area Number |
15H03820
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
石田 康博 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, チームリーダー (20343113)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 液晶 / 有機ゼオライト / キラリティ / 配向 / 多孔性材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
応募者が2003年間より継続してきた研究の不連続的な発展として、昨年度「~10 cm2の大面積でキラル空孔が一義的に配向した多孔性高分子フィルム」を得る手法を確立した。この新材料は、従来の多孔性材料に欠けていた要素を全て兼備する、極めて興味深い研究対象である。このフィルムは、液晶を前駆体とする高分子材料でありながら、あたかも「単結晶」のBlagg反射を想起させるシャープなX線回折を与える。そこで、大型放射光施設(SPring-8)にて得られる高品質なX線を用い、この回折データを徹底採取し、単結晶X線構造解析を模した手法で解析することにより、従来の高分子材料とは次元の違う詳細・精密な構造情報を得ることを目指した。 具体的には、原料純度、フィルム成形の条件、系内重合の条件を徹底的に最適化するとともに、得られたサンプルのトリミング(構造欠陥部位を切除)により、可能な限り「単結晶」に近く、なおかつ構造解析に耐えるサイズを持ったサンプル片を調製した。次いで、上述のサンプル片のX線回折データをSPring-8のビームラインにて採取し、得られた回折データを解析したところ、格子だけでなく空間群も決定され、分子レベルの極めて詳細な構造が分かった。すなわち、空間群P6122の六方格子の中では、カルボン酸が6回軸に沿って集積した二重らせん構造を取り、二重らせんが作るチャネル中には、アミンがやはり二重らせんに沿って配列することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今回の高分子フィルム材料について、当初の想定以上に詳細な分子レベルの構造が明らかとなった。また、幸運なことに、この高分子フィルム中に包摂されたゲスト分子が、ゲスト分子自身のキラリティーの有無に関わらず、らせん構造に沿って配列されることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
非線形光学効果は、次世代光エレクトロニクスの鍵技術として注目される。大きな双極子を持つ色素分子はしばしば顕著な非線形光学効果を示すが、これら色素が非線形光学効果を示ためには、本来は不安定な非中心対称性構造に配置されている必要がある(双極子が相互キャンセルされない構造 or 鏡像対称性の破れた構造)。また、得られる非線形シグナルの質(コヒーレンス性)を高めるためには、色素分子の規則配列構造を、欠陥や粒界を抑え、巨大に発達させる必要がある。このような理想構造を得るための一般法は存在せず、これまでに多大な労力が払われてきた。今回我々が開発した多孔性高分子フィルムは、空孔中に色素分子を吸着させるだけで、質の高い非線形光学シグナルを得るための理想構造を作り出す万能テンプレートとなりうる。 これまでの非線形光学研究で最も良く研究されている色素であるp-ニトロアニリンに対し、アミノ基を修飾したもの(空孔中のカルボン酸と相互作用するため:図3b)をプロトタイプ色素とし、多孔性高分子フィルム中に導入し、800 nmレーザー光入射時の400 nm光の出力を計測する。また、上記の非線形光学効果について、入射光と出力光のフィルムに対する角度依存性を精査するとともに、フィルム内での色素の配列との関連について考察する。また、同一組成ながら巨視的配向構造を持たない参照用のフィルムを作成し、その非線形光学応答の強度を、巨視的に配向したものと比較する。
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Research Products
(11 results)