2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15H03824
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
藤浪 眞紀 千葉大学, 大学院工学研究科, 教授 (50311436)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 太郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80422377)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分析科学 / 生物物理 / 生体分子 / 生体膜 / 表面・界面物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は生体膜の膜張力と流動性の相関を明らかにすることである。そこで非侵襲での膜張力測定が可能なレーザー誘起界面変形分光法(LISD法)と流動性の評価が可能な光褪色後蛍光回復法(FRAP法)を生体膜モデルの一つである自立型脂質二分子膜(黒膜)に適用するための光学系構築を行った。構築した光学系の応用としてコレステロール添加や水相中のアルカリ金属イオン種の変化が黒膜の膜張力および流動性へ与える影響を評価した。 黒膜内のコレステロールをモル分率で0から33 mol%の範囲で変化させて測定を行ったところ,膜張力も流動性もコレステロールモル分率が20 mol%以下では緩やかに,20 mol%以上では急激に変化するという同様の傾向が観察された。このような変化傾向は膜内のコレステロール割合によって脂質分子と相互作用するコレステロールの官能基が変化するという先行研究の知見と一致している。また,水相中のアルカリ金属イオン種をLi,Na,Kと変化させて測定を行ったところ,LiイオンおよびNaイオンではKイオンと比較して膜張力は上昇し,流動性は低下する様子が観察された。この測定結果はLiイオンおよびNaイオンは脂質膜表面と強く相互作用しているのに対して,Kイオンは脂質膜とほとんど相互作用していないという分子動力学シミュレーションによる報告を支持するものである。以上より構築した光学系を用いることで黒膜における膜張力と流動性の相関を初めて定量的に評価することに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
黒膜において膜張力と膜流動性の相関を取得することに成功した事例はなく,また水溶液依存性に関して理論では不一致が報告されていたが,本研究でその論争を終結させる可能性のある実験結果を提示することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
生体膜での膜張力不均一性の実証のための顕微化………実際の細胞膜では様々な分子が偏在していることから膜張力に不均一性が生じ,流動性も場所によって異なることが予想されるため,顕微測定へと発展させる。光軸が水平方向になる光学顕微鏡を構築し,長作動距離で開口数NAの高い対物レンズの使用することにより励起ビーム径を1ミクロンまで収束する。励起ビーム径が小さくなることにより固有周波数が高周波数側にシフトするが,50 MHz対応のロックインアンプであれば問題はない。対象試料としては,二種類のリン脂質が相分離するような系を選択し,一方を蛍光分子で標識し,ドメインごとでの膜張力の不均一性を実証する。その後,蛍光標識した膜タンパク質を導入し,その周囲と離れた位置での膜張力なども測定し比較する。 細胞力覚・細胞力学的アプローチ………LISDにおける極微小変形誘起が膜機能に与える影響をパッチクランプ計測によるイオン電流測定で調べることに挑戦する。これまではガラスキャピラリー等で細胞膜一部を大きく変形させたときのイオンチャネルの開閉やラフト構造の形成・解離等が議論されてきた。LISD測定の刺激は膜ゆらぎレベルであり,強い膜振動による膜タンパク質や膜構造変化との比較を行い,細胞力覚・細胞力学研究に展開する。具体的なターゲットとして,拍動する心筋細胞や細胞運動に関わる細胞接着膜タンパク質であるインテグリンを考えている。
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Research Products
(6 results)