2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H03827
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山口 佳則 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20386634)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 雄介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 機能化学研究部門, 主任研究員 (90452135)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 分析化学 / ナノ・マイクロデバイス / クロマトグラフィー / 自励振動ゲル / 分離分析 / ゲルアクチュエータ / ワンプッシュ分析 / マイクロチップ |
Outline of Annual Research Achievements |
液体クロマトグラフィーに類する分離分析をマイクロチップ内で完結できるプラスチック片を新規に開発することで、社会生活における多くの場面での分析技術が必要になる懸念事項、たとえば、残留農薬の検出、薬害低分子化合物の分析、環境汚染物質の分析などをその場で、低価格にて測定、検出を行うことが可能となります。マイクロチップで送液を含む液体クロマトグラフィー分析が完結できるので、使い捨て、環境負荷の軽減、外部の汚染の軽減、マイクロチップからの外部汚染の軽減、などの多くの分析による社会問題を解決できます。 液相の送液のためのポンプ技術を含む液体クロマトグラフィーの技術をマイクロチップ内に集積化するためには、マイクロチップ内に送液ポンプを内蔵することが必要です。マイクロチップ内に作られたマイクロチャンネルの限られた空間での分析もポンプの設計と同時に研究開発する必要があります。 本研究においては、マイクロチップ内のポンプの機構のためには自励振動ゲルを内蔵し、ポンプとして機能させます。自励振動ゲルは酸の溶液下で周期的に振動することによって、アクチュエータとして動作します。このアクチュエータの動作能力は現時点においてマイクロチャンネルに製作された流路内に溶液をただの一度だけ送液する能力を持っています。自励振動ゲルを用いたマイクロチップの分析では、一度の移動相の送液のみで分析を完結し、分析を完了するマイクロチップを考案する必要があります。 今年度は、(1) ただ一度の送液だけでクロマトグラフィー分析を可能とするマイクロチャンネル(ワンプッシュクロマトチップ)の考案。(2) ワンプッシュクロマトチップを評価することのできるマイクロチップ分析装置の開発。 (3) 新規の自励振動ゲルの研究・開発。の3つの項目について研究を行いました。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規にプラスチック製(Polycarbonate製)のマイクロチップを考案し作製しました。作製したマイクロチップは内部に移動相の溶媒及び、固定相になる微細な球形粒子を内蔵でき、さらに、ワンプッシュでの移動相を送液することができます。大きさは15cm(長さ)X 3cm(幅)x 2mm(厚)です。移動相が流れることの出来るマイクロチャンネルの直径を10x10マイクロから100×100マイクロに大きくすることによって、分析に必要な移動相の送液が安定して十分な分析機構を持つマイクロチャンネルを内部に構成できるように設計しました。開発したマイクロチップは内部にポンプの原動力となる自励振動ゲルを充填することを想定したものです。加えて、本年度は、考案したマイクロチップ内に集積化した移動相の溶液をワンプッシュで安定した流れを作り出す機構をもつマイクロチップ分析装置を開発しました。開発したマイクロチップ分析装置はマイクロピストン(直動式アクチュエータ)の動力機構をもち、任意の押し出し時間でただ一回の一方向のみピストンを任意の距離(最大10mm)で押出すことができます。検出には高照度LED光源からの蛍光励起と、発光された蛍光をカラーカメラによって検出し画像分析によって行います。このマイクロチップはクロマトグラフィー分析を外部からの送液のみならず、外部からの実験補助を必要とせず、外部への汚染の全く無いマイクロチップとして意図したマイクロチップです。現在までに、装置の基本的な機構の動作確認と新規考案したマイクロチップを利用した動作確認が完了しました。 マイクロチップの内部にポンプの原動力として集積化する自励振動ゲルについて、中心化合物や架橋分子の設計を行いました。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に作製したマイクロチップを利用した、移動相の容量を微少量にした際に起こる拡散を定量化し、移動相の溶媒の容量が数マイクロリットルに制限した際の分離分析の機構について、固定相の表面における化学的な相互作用を拡散係数の科学的現象と捕らえ、数マイクロリットルの移動相での分析の原理を追及します。前年度に研究開発したマイクロチップ分析装置を利用して、実験を行い、理論の検証、拡散係数の帰納実験を繰り返します。作製したマイクロチップは移動相が流れるマイクロチャンネルの直径を10x10マイクロから100×100マイクロの大きさに変更したために、理論的には、分析がより進むと考えられます。さらに、画像による分析についても、厚みが増えたことによる単位面積当たり蛍光量が増加するために、その分析における分解能を定量できると考えられます。加えて、マイクロチャンネル内を流れる移動相の安定した流れを作り出す機構として新規にマイクロピストン型の動力機構の動作関数を実験で検証し、ワンプッシュの動作でのクロマトグラフィー分析に十分な送液を実現できるように実験を繰り返します。 これらの一連の基礎研究は、移動相の全体の容量を数マイクロリットルにすること流体による分離分析原理の実験的検証を含みます。固定相に微細な球形粒子を利用することによって起こるマイクロ対流、移動相の流量をマイクロリットルにすることによる、移動相の粘度、固定相表面の化学分子との相互作用による理論段数、分離能を検討します。繰り返しになりますが、検証実験には、開発したマイクロチップとマイクロチップ分析装置を利用します。 マイクロチップ内の送液の動力となる自励振動ゲルについては、前年度と同様に前躯体の設計を行う予定です。
|
Research Products
(5 results)