2015 Fiscal Year Annual Research Report
ラジカル反応を契機とする特異な変換反応を触媒するラジカルSAM酵素の反応機構解析
Project/Area Number |
15H03834
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
江口 正 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (60201365)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ラジカルSAM酵素 / 生合成 / 反応機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、まずアミノグリコシド抗生物質であるアプラマイシンの3’-デオキシ化に関わるラジカルSAM酵素の機能解析を行った。アプラマイシンは2-デオキシストレプタミン含有型アミノグリコシド抗生物質であり、C-3’位に水酸基を有さないのが特徴的である。これらの抗生物質の生合成遺伝子クラスター中のNADP+依存酸化還元酵素AprD3とラジカルSAM酵素AprD4が、C-3’位のデオキシ化反応に関与することが考えられたので、これら二つの酵素の組換えタンパク質を調製して酵素反応解析を行った。AprD3はNAD(P)+依存型酸化還元酵素と推定され、またAprD4は、ラジカルS-アデノシルメチオニン(SAM)酵素に特徴的な[4Fe-4S]クラスター結合モチーフを有していた。AprD4を大腸菌にて発現、精製し、クラスターの再構成、還元を行ったところ、可視紫外吸収およびEPRスペクトルで活性型[4Fe-4S]+クラスターを確認できた。両酵素を調製した後、アプラマイシン生合成中間体と考えられるパロマミンをデオキシ化反応の候補基質として酵素反応を検討した結果、C-3’位がデオキシ化されリビダミンへと変換されることが明らかになった。また、本反応ではAprD4によってC-3の水酸基の脱水反応を伴い、C-4ケトン中間体を生成し、これが、AprD3で還元されることでC-3’位のデオキシ化反応が進行することを明らかにした。本成果は、現在投稿論文準備中である。さらに抗生物質ホスホマイシンのC-メチル化に関わると考えられたラジカルSAM酵素のクローニング、発現に成功した。現在、C-メチル化反応における基質の調製、酵素反応生成物の標品の調製を行い、本酵素の機能および反応機構解析を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度にて、アミノグリコシド抗生物質であるアプラマイシンの3’-デオキシ化に関わるラジカルSAM酵素の機能解析を行い、その機能解析に成功した。さらに抗生物質ホスホマイシンのC-メチル化に関わると考えられたラジカルSAM酵素のクローニング、発現に成功している。ホスホマイシンのC-メチル化酵素は、通常用いられる大腸菌での異種発現系では可溶性タンパク質は得られず、放線菌での発現系を用いることにより、可溶性酵素を得ることに成功した。この様に、問題点を克服しつつ、新たな知見が得られている段階にあり、これらを考えるとほぼ予定通りに研究計画が進んでいると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
基本的には、本研究はおおむね順調に進展している。先にも述べたとおり、大腸菌での発現がうまくいかなかったことに対して、これまでの経験を通して、問題点を克服できている。今後は、さらに微生物二次代謝におけるラジカルSAM酵素のクローニング、発現、および酵素反応解析をさらに進めて、機能未解明のラジカルSAM酵素の機能解明を目指す。
|
Research Products
(4 results)