2016 Fiscal Year Annual Research Report
有機-無機複合(ナノコンポジット)ゲル基盤技術の展開と機能創出
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15H03870
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
原口 和敏 日本大学, 生産工学部, 研究所教授 (10373391)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナノ材料 / ゲル / ナノコンポジット / 刺激応答性 / 自己修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)NCゲルの特異的機能の解明と機能最大化に関しては、NCゲルフィルムの一軸延伸による特異的な光学異方性の発現挙動を、特に高クレイ濃度NCゲルを中心に検討した。その結果、延伸に伴いクレイナノシートが一軸配向から急速に面配向へ変化していくこと、それにより高度に二次元配列したクレイナノシートからなるNCゲル材料が得られることが明らかとなった。一方、医療用途での応用として、NCゲルが脳マシンインターフェイスデバイスとして有効に機能する可能性を共同研究により明らかにした。 (2)新規NCゲルの合成と機能創出に関して、広範囲なモノマー種について共重合NCゲルの合成検討を行った。その結果、特定の共重合(N-イソプロピルアクリルアミド-N,N-ジメチルアクリルアミド)系において、各ホモポリマーNCゲルより高い強度・弾性率を示すという特異的な共重合効果が全組成領域で観察された。また、この強化メカニズムを共重合NCゲルの平衡膨潤度測定やクレイ分解後のポリマー分析などから明らかにした。 (3)三成分系NCゲルの創製研究を継続し、金属酸化物との複合による新規NCゲルの構造・特性を明らかにした。具体的には、ゾル-ゲル反応によるネットワークと高分子-クレイネットワークを融合した三成分系NCゲルの合成に成功し、その特徴的な構造を分析的に解明すると共に、金属酸化物成分による力学物性の大きな増加や特異的な膨潤-収縮特性について明らかにした。一方、NCゲル-貴金属ナノ粒子複合ゲルに関しては、NCゲル中でのナノ粒子分解挙動を明らかにした。 (4)形態制御によるNCゲル機能化に関して、アルコール-水2成分系で従来から観測されてきた異常粘度増加現象が、少量のクレイナノシートの存在により150~1500倍に増幅され、水-アルコール-クレイゲルが形成されることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.非水媒体NCゲルの合成に成功し、優れた機能(大気安定性、高力学物性、自己修復性、接着性など)を保持することを確認した。また、NCゲルの一軸延伸により、特異的な光学異方性の発現、クレイ面配向、複屈折の可逆変化などについて明らかにした。応用展開として脳内インプラントデバイスのインターフェイスとしてNCゲルが機能する可能性を得た。 2.UCST型温度応答NCゲル、共重合NCゲル、および三成分系NCゲルの合成、及び生体適合高分子とクレイからなるNCゲルシステムの構築に成功し、多くの新たな特性(例:相転移温度制御、共重合による力学物性向上、膨潤-収縮特性制御、高弾性率化、特異的なネットワーク構造、粘度の異常温度依存性など)を示すことを見出した。 3.アルコール-水2成分系での異常粘度増加(例:2mPa・s)がクレイナノシート共存により150~1500倍に増幅されることを見いだした.また、この異常粘度増幅がアルコールやクレイの種類および濃度により変化することを明らかにすると共に、アルコールの水中でのクラスター形成により誘導されたクレイナノシートのネットワーク形成によること(メカニズム)を提案した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに、有機(高分子)-無機(クレイ)ネットワーク構造に由来する特異的な機能の最大化と機構解明、及び新しいNCゲルの合成を中心に検討を行い、前記の成果を得た。本年度は、継続してこれらを行うと共に、以下の点に重点をおいて研究を展開する。 (1)昨年度までに開発した新規NCゲルおよび非水NCゲルに関して、力学物性、動的界面、粘弾性、吸/脱着、自己修復性に焦点をあて、機能の最大化を目指した検討を継続する。特に、センサー能、異種材料接合機能、人工筋肉代替能について、従来技術では行えないレベルへの機能拡大にチャレンジする。 (2)昨年度までに達成した複合系NCゲル(双性イオン構造NCゲル、金属酸化物ナノ複合NCゲル)について、その特異的な刺激応答性や広範囲な力学物性制御のメカニズム解明検討を継続し、物性制御範囲の更なる拡大、新機能の探索を行う。 (3)従来にないゲル化温度依存性(高温で高粘度)を示すNCゲル系、低高分子濃度NCゲル系、水-アルコール-クレイ3成分系ゲルについて、その機能の発現メカニズムを解明すると共に、他の高分子系へ展開し、それらの一般化をめざす。また、ゲルの強さが実用的に利用できるレベルとなるように機能の最大化を狙う。 (4)NCゲルの微粒子化、薄膜化、多孔質化などの形態制御により、生体組織モデルとしての可能性検討を進める。
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