2016 Fiscal Year Annual Research Report
導電性ナノシートを用いた革新的レドックスキャパシタ電極の創製
Project/Area Number |
15H03873
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大久保 將史 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (20453673)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 二次電池 / 層状化合物 / キャパシタ |
Outline of Annual Research Achievements |
分散型エネルギー社会を構築するためには電気自動車の普及が重要な課題であり、その普及に資する高入出力型蓄電デバイス開発への要請が強まっている。本研究開発では、負極におけるイオン拡散抵抗の低減により、リチウムイオン電池の高出力化を目指した。 具体的な開発対象としては、金属導電性の層状化合物MXeneに着目した。MXeneは、一般組成式Mn+1XnTx(M: Ti, V, Cr, etc., X: C, N, T: 表面官能基, n = 1, 2, etc.)で表される。MXeneをリチウムイオン電池用負極として応用することで、リチウムイオン電池の高出力化が期待される。本年度では、コスト的優位性の高いMXene Ti2CTxについて、リチウムイオン電池の負極材料として評価した。 Ti2AlCからのAl層脱離は、LiFを溶解した希塩酸で処理することで行った。粉末X線回折から、Ti2C層間距離が6.8 Åから8.7 Åまで広がり、Al層の脱離、および表面官能基Tの修飾によりイオン挿入脱離に利用可能な層間空間が形成されたことが示唆された。 得られたMXene Ti2CTxについて20 mA/gで定電流充放電試験を行った結果、SEI形成に起因して初回クーロン効率は70%程度であったが、2サイクル目以降は250 mAh/gを超える可逆な充放電容量が、99%を超える高いクーロン効率で得られた。また、100サイクル後の容量維持率は77%であった。MXene Ti2CTxの出力特性を調べた結果、2000 mA/gの高速充放電条件下においても130 mAh/gの充放電容量を示し、MXene Ti2CTx電極の優れた出力特性が確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
MXene Ti2CTxの出力特性を調べた結果、2000 mA/gの高速充放電条件下においても130 mAh/gの充放電容量を示し、MXene Ti2CTx電極の優れた出力特性が確認された。この性能は、実用正極材料と組み合わせたフルセルにおいても確認され、高性能負極材料であることが実証された。この結果は、Adv. Energy Mater. (IF = 15)に掲載された上に、内容が高い評価を受け、back coverに本成果を示すイラストが掲載された。
|
Strategy for Future Research Activity |
2016年度までの研究により、MXeneという新しい層状化合物が優れた電極特性を示すことを明らかにすることができた。しかし、その原因となる反応機構が解明されていない。有機電解液と水系電解液での静電容量の差、レドックスが生じるcriteria、イオン拡散経路、イオン貯蔵サイト、など、反応を直接的に支配する要因は未解明である。この点については、第一原理計算を積極的に取り入れながら、研究開発を遂行する。更に、界面におけるSEI形成やバインダーとの相互作用なども明らかになっておらず、今後、電気化学的手法による解析を推し進める。
|