2016 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属酸化物のエピタキシーと電子相解析による電極活物質の開発
Project/Area Number |
15H03881
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大友 明 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (10344722)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 薄膜・表面 / 超伝導 / 光触媒 / 遷移金属酸化物 / エピタキシャル成長 / 電気化学セル / 金属-絶縁体転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,高品位な遷移金属酸化物の薄膜試料を作製し,実用的な可視光応答型光触媒材料やリチウムイオン電池の電極材料を創製すること目的とする.また,反応活性や電子状態を電子相図で解析する手法を提案し,その有用性を明らかにすることを目的とする. 前年度に確立した実験結果に基づき,平成28年度は活性を向上させる因子についてさらに検討を進めるとともに材料範囲を拡張した.リチウムイオンの挿入脱離量を精密に制御することができていなかった問題は,試料形状や測定方法を工夫することで解析に十分な精度を達成しえることが分かったため解決した.以下に成果の概要についてテーマ毎に簡潔に記述する. 酸化鉄光電極表面上に堆積させる化合物や堆積手法を検討し,光電流の立ち上がり電位を負側にシフトさせる表面化学修飾について明らかにした.後周期の遷移金属を含むリン酸コバルト塩や酸化ニッケルが有用であり,前者ではマイクロ波加熱処理が,後者ではパルスレーザ堆積法が適した手法であることを見出した.2つの化合物に共通する知見として,立ち上がり電位を負側にシフトさせるには1~2分子層の堆積で十分であり,表面化学修飾の効果は,主に電極表面と電解液の間に存在する電荷移動抵抗の低下によってもたらされることが分かった. 電気化学Liイオン挿入によって引き起こされるWO3薄膜における絶縁体-金属転移の起源を明らかにした.バルクLixWO3のエレクトロクロミック特性が詳細に調べられているのに対し,電子物性についてはほとんど知られていない.AxWO3はA組成に応じて複雑な構造相転移を示し,LixWO3では特に複雑であるため電子相転移との相関が明らかになっていなかった.電気化学セルを用いた電子相図解析とX線構造解析により,正方晶と立方晶が共存する組成領域で絶縁体-金属転移が起こることを初めて明らかにした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では,計画通り電気化学的に挿入脱離が容易な小イオンとなるリチウムを含む遷移金属酸化物を対象に電子相図解析を進めてきた.電気化学的な組成制御には適さない大イオンであるセシウムを含むタングステン酸化物の薄膜成長に注力したところ,バルクにおける超伝導相領域の限界を超える六方晶タングステンブロンズCsxWO3薄膜の合成に成功した.バルクCsxWO3ではCs組成が0.19を下回ると構造相転移とともに超伝導状態が消失する.Cs組成0.11まで六方晶系である超伝導薄膜を合成することに成功した.超伝導の転移温度がCs組成に依存するというのが定説であるが,Cs組成に関わらず格子定数に依存するという新しい知見が得られた.CsxWO3系における超伝導相図を塗り替える結果であり,さらにCs組成が低い薄膜合成に取り組むことで,バルクを超える超伝導転移温度の達成が期待される. 次年度に計画していた原子層制御による界面分極の制御と光触媒活性における界面分極の効果を検討できる系を見出した.すなわち,LaFeO3/SrTiO3ヘテロ接合における界面分極が光触媒活性に与える影響を明らかにした.LaFeO3は,水の酸化反応を触媒する可視光応答型の光電極である.SrTiO3 (100)面との界面分極を制御した接合を形成し,光電気化学特性を評価したところ,界面分極から期待される内蔵電位が観測された.LaFeO3中の光キャリアの導電率が低いことに起因して効率は低いものの,界面分極によりキャリアの取り出し効率を制御した点において新規性が高いと考えている.また,得られた知見により今後バイポーラ光触媒の実証に向けたアプローチがしやすくなった.
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画は順調に進んでいる.引き続き,遷移金属酸化物のエピタキシーと電子相解析による電極活物質の開発を進めていくとともに,次の研究テーマにつながるテーマに積極的に取り組む.
|
Research Products
(28 results)
-
-
[Journal Article] Formation of indium-tin oxide ohmic contacts for β-Ga2O32016
Author(s)
T. Oshima, R. Wakabayashi, M. Hattori, A. Hashiguchi, N. Kawano, K. Sasaki, T. Masui, A. Kuramata, S. Yamakoshi, K. Yoshimatsu, A. Ohtomo, T. Oishi, M. Kasu
-
Journal Title
Japanese Journal of Applied Physics
Volume: 55
Pages: 1202B7-1-3
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Epitaxial growth and electric properties of γ-Al2O3 (110) films on β-Ga2O3 (010) substrates2016
Author(s)
M. Hattori, T. Oshima, R. Wakabayashi, K. Yoshimatsu, K. Sasaki, T. Masui, A. Kuramata, S. Yamakoshi, K. Horiba, H. Kumigashira, A. Ohtomo
-
Journal Title
Japanese Journal of Applied Physics
Volume: 55
Pages: 1202B6-1-6
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] β-Ga2O3用ITOオーミック電極2016
Author(s)
大島 孝仁, 若林 諒, 服部 真依, 橋口 明広, 河野 直人, 佐々木 公平, 増井 建和, 倉又 朗人, 山腰 茂伸, 吉松 公平, 大友 明, 大石 敏之, 嘉数 誠
Organizer
第77回応用物理学会秋季学術講演会
Place of Presentation
朱鷺メッセ (新潟県新潟市)
Year and Date
2016-09-13 – 2016-09-16
-
[Presentation] ITO ohmic contacts for β-Ga2O32016
Author(s)
T. Oshima, R. Wakabayashi, M. Hattori, A. Hashiguchi, N. Kawano, K. Sasaki, T. Masui, A. Kuramata, S. Yamakoshi, K. Yoshimatsu, A. Ohtomo, T. Oishi, M. Kasu
Organizer
German-Japanese Gallium Oxide Technology Meeting 2016, Leibniz Institute for Crystal Growth
Place of Presentation
Berlin, Germany
Year and Date
2016-09-07 – 2016-09-09
Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-